2019 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of ABA signaling pathways by Raf-like protein kinase family
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19H03240
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
梅澤 泰史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70342756)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アブシシン酸 / リン酸化 / プロテインキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
アブシシン酸(ABA)は、植物の環境応答や種子成熟に重要な植物ホルモンである。ABAシグナルの中枢経路では、SnRK2と呼ばれるタンパク質リン酸化酵素(キナーゼ)が活性化し、様々なタンパク質をリン酸化してABA応答を誘導する。しかしながら、SnRK2の活性化のメカニズムについては不明な点が多い。申請者らは、これまでの研究からRaf型キナーゼの一つであるRaf36がSnRK2と相互作用し、ABA応答を負に制御することを見いだした。そこで、Raf36やその近縁遺伝子群について解析を進め、ABAシグナル伝達系におけるSnRK2-Raf複合体の機能を明らかにすることを目的とした。 Raf36をはじめとする複数のグループC RafのABA応答における生理機能を明らかにするため、遺伝子破壊株を取得して表現型解析を行った。また、遺伝子破壊株が利用できないRafについてはCRISPR/Cas9システムを用いて変異体を作成した。さらに、SnRK2とグループC Rafの相互作用を明らかにするために、酵母ツーハイブリッド(Y2H)法やBiFC法による解析を行ったところ、試験管内および生体内のいずれにおいても相互作用が認められた。また、SnRK2とRafを用いたin vitroリン酸化分析の結果、SnRK2がRaf36をリン酸化することがわかった。 以上の結果から、SnRK2とグループC Rafの関係性について、その概要を明らかにすることができた。今後は、SnRK2によるRaf36のリン酸化の生理学的意義について解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では、①ABA応答におけるグループC Raf遺伝子の生理機能、②SnRK2とグループC Rafの相互作用の分子機構、③SnRK2とグループC Rafを用いたin vitroリン酸化分析、を実施することとしていた。 ①については、すでに単離していたRaf36およびRaf22の遺伝子破壊株に加えて、グループCに属するRaf遺伝子の遺伝子破壊株を取得した。また、遺伝子破壊株を取得できなかったものについては、CRISPR/Cas9法を用いて変異体を作出した。また、複数の遺伝子破壊株を掛け合わせることで、多重変異体を作成した。現在、用意ができた変異体についてABA応答等の表現型を調べている。 ②については、酵母ツーハイブリッド法を用いて、SnRK2とRafの相互作用を調査した。その結果、ABA応答に関わるSnRK2であるSRK2EやSRK2D, SRK2Iと、 Raf36やRaf22の相互作用が認められた。タバコの葉を用いて二分子蛍光相補(BiFC)法を行ったところ、生体内での相互作用を確認できた。 ③のin vitroリン酸化分析は、SnRK2とRafの間のリン酸化の関係について調べるために行った。その結果、SnRK2がRaf36やRaf22をリン酸化することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
SnRK2は、植物のABAシグナル伝達の中枢因子として知られている。これまでの研究から、植物体内においてSnRK2とグループC RafであるRaf36やRaf22が相互作用していること、SnRK2がグループC Rafをリン酸化すること、そしてグループC Rafが植物のABA応答を負に制御することなどを明らかにすることができた。今後は、①SnRK2によるリン酸化がRafの分子機能に及ぼす影響、および②RafによるABA応答の負の制御メカニズム、などを明らかにしていく必要がる。①を明らかにするために、Rafのリン酸化部位を明らかにするとともに、リン酸化部位に変異を導入したRafの分子機能を明らかにするための実験を行う。②については、Rafがリン酸化する下流のタンパク質を明らかにするために、野生型のシロイヌナズナとRafの遺伝子破壊株を用いて、比較リン酸化プロテオーム解析を行い、Rafの遺伝子破壊によってリン酸化レベルが変動したタンパク質を捕捉する計画である。
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Research Products
(12 results)