2019 Fiscal Year Annual Research Report
葉緑体機能を支えるレドックス制御システムの包括的解析
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19H03241
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 啓亮 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (40632310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 建 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00242305)
川合 真紀 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10332595)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光合成 / 葉緑体 / レドックス制御 / チオレドキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
移動能力を欠く植物が、絶えず変動する光環境で効率よく光合成を行うためには、光合成の場である葉緑体の機能を柔軟かつ精密に調節する必要がある。本研究では、酸化還元を基盤としたタンパク質の機能制御であるレドックス制御に注目する。近年、葉緑体のレドックス制御系は、多くのタンパク質(制御因子群と標的群)が関わるネットワーク状システムとして再認識されており、そのシステム全体の分子基盤や生理意義の解明が重要な課題となっている。本研究課題では、分子生物学・生化学から生理生態学までを貫徹する基礎研究を行い、葉緑体機能を統御するレドックス制御系を包括的に理解する。 当該年度は、レドックス制御を受ける葉緑体タンパク質の新規同定を行った。LC-MS/MSを用いたプロテオーム解析を行い、多数のチラコイド膜タンパク質をレドックス制御の標的の候補として同定することができた。また、個別の生化学解析により、2つの葉緑体タンパク質(3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼとホスホフルクトキナーゼ)を新規のレドックス制御の標的酵素として決定することができた。さらに、ゲノム編集技術により、代表的なレドックス制御の標的酵素であるリンゴ酸デヒドロゲナーゼのレドックススイッチを欠損させたシロイヌナズナを作出し、その表現型解析(生育、光合成特性、メタボロームなど)によってはじめてこの酵素のレドックス制御の生理意義に関する知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
レドックス制御の標的タンパク質の同定に関しては、多数のチラコイド膜タンパク質を候補として列挙することができ、また2つの新規標的酵素を決定して論文発表するなど、予想を上回る成果を挙げることができた。ゲノム編集技術を用いた解析も順調であり、レドックス制御の新しい機能を明らかにするなど、研究課題全体が大きく進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたチラコイド膜上のレドックス制御の標的酵素の候補のうち、特に機能未知のものに注目してその機能解明と制御様式を詳細に明らかにする。また、複数得られているゲノム編集株の解析を継続して進め、レドックス制御系が持つ生理的なインパクトをより詳細に明らかにする。
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Research Products
(16 results)