2019 Fiscal Year Annual Research Report
Correlation between photosynthesis and phototaxis in Chlamydomonas
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19H03242
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
若林 憲一 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (80420248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
得津 隆太郎 基礎生物学研究所, 環境光生物学研究部門, 助教 (60613940)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光走性/走光性 / 繊毛/鞭毛 / 緑藻 / クラミドモナス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、緑藻クラミドモナスを材料として、多くの遊泳性の藻類が見せる光走性の分子メカニズムの詳細と、その生理的意義を明らかにすることを目的としている。 クラミドモナスは2本の繊毛(鞭毛とも呼ぶ)を平泳ぎのように動かして水中を泳ぐ、淡水性の単細胞藻類である。眼点と呼ばれる光受容器官で光の強さと方向を感受し、2本の繊毛の打つバランスを調節して正または負の光走性(それぞれ光源方向に向かって/遠ざかって泳ぐ)を示す。正と負の光走性の切り替えメカニズムは長年の謎だったが、我々は以前、細胞内の活性酸素種(ROS)の濃度変化がシグナルになっていることを見出した。ROSが増えると正、減ると負の光走性を示すのである。しかり、正の光走性を示すと細胞が受ける光強度は増し、それによってさらに細胞内ROS濃度は増える。つまり、この制御メカニズムは一見すると自殺行為である。なぜクラミドモナスがこのような生存戦略をとっているのか、それを分子レベルで解き明かすことが大きな目的である。 2019年度から、繰越にともない2020年度までは、計画書の予定通り「ROSが増えても負」「ROSが減っても正」「ROSが変動しても光走性を示さない」の3種の変異株をそれぞれ2種、9種、4種単離することができた。全ての株について次世代シーケンスによって全ゲノム解読が終了し、一部の株についてはすでに原因遺伝子を明らかにすることができ、現在論文を執筆中である。また、それらの株の光走性以外の表現型(光合成、増殖率、運動性など)を調べたところ、同じ光走性表現型といってもその他の表現型に統一性がないことを見出した。つまり「ROS依存的な光走性制御経路」というべき一本道の制御経路はなく、さまざまな細胞内の代謝経路が光走性の正負切り替えに寄与することがわかってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍によって変異株の管理やゲノム解析に多少の支障をきたしたが、繰越を認めていただいたことなどによりある程度のリカバーができ、現時点としては概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
変異株のうち、原因遺伝子が解明できたものについては、その機能解析を行い、なぜそのタンパク質に異常がでると光走性の正負が入れ替わるのかを分子レベルで説明することを目指す。また、解明できていないものについては、引き続き次世代シーケンスデータと古典遺伝学的解析の組み合わせによって原因遺伝子候補を絞り込んでいく。
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