2019 Fiscal Year Annual Research Report
植物細胞壁ペクチン生合成糖転移酵素の同定とペクチンの機能解明
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19H03252
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石水 毅 立命館大学, 生命科学部, 教授 (30314355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 京子 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50570587)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞壁 / 植物 / 植物栄養 / 多糖 / 糖転移酵素 / ペクチン / ホウ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞壁の主要成分のペクチンは、植物の生育に欠かせない分子である。構造が複雑で約30の糖転移酵素がその生合成に関わると考えられている。しかし、ほとんどの糖転移酵素遺伝子が未同定なままで、ペクチンの機能解析も進んでいない。本研究では、ペクチンの構成多糖、ラムノガラクツロナンI(RG-I)およびラムノガラクツロナンII(RG-II)生合成に関わる4つの糖転移酵素(ペクチンRG-I主鎖生合成ガラクツロン酸転移酵素、ペクチンRG-I側鎖生合成ガラクトース転移酵素、ペクチンRG-II側鎖アピオース転移酵素、ペクチンRG-II側鎖Kdo転移酵素)に焦点を当て、それらの遺伝子を同定することを第一の目的とする。遺伝子同定した糖転移酵素について、遺伝子発現抑制変異体の解析によりペクチンの機能解明を行うことも目的とする。令和元年度は、このうち二つの酵素を対象に研究し、以下の実績を得た。 ペクチンRG-I側鎖生合成ガラクトース転移酵素の活性を初めて検出し、この酵素の生化学的性質を明らかにした。この成果を、Plant Physiol. Biochem.誌に発表し、EC番号を申請した。 RG-IIのアピオース残基は、ホウ酸ジエステル結合を介してペクチンを二量体化させ、ペクチンの高次構造形成に寄与する。このアピオースを結合させるRG-II側鎖生合成アピオース転移酵素の基質を調製した。ホウ素トランスポーターBOR1欠損変異シロイヌナズナの変異原処理によって成長が抑制される表現型を回復する遺伝子として見出されている機能未知の糖転移酵素様遺伝子をRG-II生合成アピオース転移酵素遺伝子とした。この遺伝子がコードするタンパク質をタバコBY-2細胞に発現させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ペクチンの構成多糖、ラムノガラクツロナンI(RG-I)およびラムノガラクツロナンII(RG-II)生合成に関わる4つの糖転移酵素(ペクチンRG-I主鎖生合成ガラクツロン酸転移酵素、ペクチンRG-I側鎖生合成ガラクトース転移酵素、ペクチンRG-II側鎖アピオース転移酵素、ペクチンRG-II側鎖Kdo転移酵素)に焦点を当て、それらの遺伝子を同定することを第一の目的としている。令和元年度は、このうち二つの酵素を対象に研究し、以下の実績を得た。 【ペクチンRG-I主鎖生合成ガラクトース転移酵素】ペクチンRG-I主鎖のラムノース残基にガラクトースを1残基のみ結合させるガラクトース転移酵素があると想定し、その酵素の活性検出を試みた。この酵素の活性を初めて検出することができ、この酵素の生化学的性質を明らかにした。この成果を、Plant Physiol. Biochem.誌に発表し、EC番号を申請した。 【ペクチンRG-II側鎖生合成アピオース転移酵素】RG-IIのアピオース残基は、ホウ酸ジエステル結合を介してペクチンを二量体化させ、ペクチンの高次構造形成に寄与する重要な糖残基である。このアピオースを結合させるRG-II生合成アピオース転移酵素の活性検出と遺伝子同定を試みている。この酵素の基質(オリゴガラクツロン酸、UDP-アピオース)を調製した。ホウ素トランスポーターBOR1欠損変異シロイヌナズナの変異原処理によって成長が抑制される表現型を回復する遺伝子として見出されている機能未知の糖転移酵素様遺伝子をRG-II生合成アピオース転移酵素遺伝子とした。この遺伝子がコードするタンパク質をタバコBY-2細胞に発現させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象の4つのペクチン生合成酵素のうち、ペクチンRG-I側鎖生合成ガラクトース転移酵素とペクチンRG-II側鎖生合成アピオース転移酵素について、遺伝子同定に向けた研究を引き続き行う。 【ペクチンRG-I側鎖生合成ガラクトース転移酵素】今年度は、この酵素の活性測定法を用いて、遺伝子同定を行う。ガラクトースを側鎖に多く含むRG-Iは、樹木の重力刺激の応答で生じる「あて材」に局所的に含まれることがわかっている。産業技術総合研究所の光田展隆博士とロシア科学アカデミーのタチアナゴルシュコワ博士との共同研究により、ポプラのあて材の発現遺伝子の解析を行い、G層形成時に発現の高い2種類の機能未同定糖転移酵素様遺伝子を見出し、これらを候補遺伝子とする。これらの遺伝子がコードするタンパク質をHEK293T細胞にて発現させ、酵素活性を調べる。 【ペクチンRG-II側鎖生合成アピオース転移酵素】今年度は、候補遺伝子がコードするタンパク質から酵素活性を明確に検出することで酵素遺伝子を同定することを計画している。これまでに、タバコ培養細胞BY-2を宿主としてリコンビナントタンパク質の発現を行ったが、哺乳動物培養細胞HEK293Tなど他の宿主によるタンパク質発現も行う。このタンパク質の酵素活性測定を行う。また別の候補遺伝子がコードするタンパク質の酵素活性を調べることも行う。酵素遺伝子が同定できれば、この遺伝子の変異体シロイヌナズナについて、糖鎖組成解析などの化学的解析と植物の形態を観察する表現型解析を行う。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Practical preparation of UDP-apiose and its application for studying apiosyltransferase2019
Author(s)
Fujimori, T, Matsuda, R., Suzuki, M., Takenaka, Y., Kajiura, H., Takeda, Y., Ishimizu, T.
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Journal Title
Carbohydrate Research
Volume: 477
Pages: 20-25
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Rhamnogalacturonan I galactosyltransferase: Detection of enzyme activity and its hyperactivation.2019
Author(s)
Matsumoto, N., Takenaka, Y., Wachananawat, B., Kajiura, H., Imai, T., Ishimizu, T.
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Journal Title
Plant Physiology and Biochemistry
Volume: 142
Pages: 173-178
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Preparation of UDP-apiose, a substrate of the apiosyltransferase involved in pectin rhamnogalacturonan II biosynthesis2019
Author(s)
Fujimori, T, Matsuda, R., Suzuki, M., Takenaka, Y., Kajiura, H., Takeda, Y., Ishimizu, T.
Organizer
The 15th Cell Wall Meeting
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