2019 Fiscal Year Annual Research Report
Neural mechanisms underlying habitual memory formation in insect microbrains
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19H03261
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水波 誠 北海道大学, 理学研究院, 教授 (30174030)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 学習 / 習慣記憶 / 古典的条件付け / 微小脳 / コオロギ / 昆虫 / オクトパミン / 匂い学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、昆虫の繰り返し訓練により形成される習慣記憶の性質とその神経基盤を明らかにし、哺乳類の習慣記憶との相違点および共通性を明らかにすることである。初年度は、(1) 習慣記憶のコンテキスト依存性の解明、(2) 習慣記憶への消去訓練の効果の解明、(3)「報酬と毒素との連合」による報酬価値引き下げ実験系の確立、の3つの課題に取り組んだ。 習慣記憶のコンテキスト依存性に関しては、フタホシコオロギのパブロフ型条件づけにいて、訓練時とテスト時とで明暗の照明条件を変える実験の結果、繰り返し訓練で成立した習慣記憶は学習初期の記憶よりも明暗コンテキストへの依存性が低いことが明らかになった。これは哺乳類のオペラント条件付けでは習慣記憶は学習初期の記憶よりコンテキスト依存性が高いという報告とは真逆の結果であった。 習慣記憶への消去訓練の効果の解明に関しては、繰り返し訓練により形成される習慣記憶は学習初期に記憶とほぼ同様な消去への感受性を持つことが確認された。これも哺乳類のオペラント条件付けでは習慣記憶は学習初期の記憶よりも消去訓練への耐性が高いという結果と全く異なっていた。 「報酬と毒素との連合」による報酬価値引き下げ実験に関しては、スクロース(ショ糖)またはグルコースを若い梅の実に含まれる毒素であるアミグダリンと連合させる学習系の開発に成功した。アミグダリンは昆虫の消化管内でβグルコシダーゼにより分解されシアンイオンを発生させる毒物である。しかし同時に、この味覚嫌悪学習系の報酬価値引き下げ実験への適用には克服すべき問題点があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に設定した課題はほぼ達成でき、研究は順調に進んでいる。しかし残念なことに、本年度開発したアミグダリンとグルコースの味覚嫌悪学習系は、報酬価値引き下げ実験への応用には大きな困難があることがわかった。このため今後は別のタイプの味覚嫌悪学習系の立ち上げが必要と判断された。これは全くの想定外であった。
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Strategy for Future Research Activity |
「報酬と毒素との連合」による報酬価値引き下げ実験に関して、新たにスクロースを塩化リチウムの血中投与による体調不良を連合させる味覚嫌悪学習系の開発し、この味覚嫌悪学習系の報酬価値引き下げ実験への適用可能性について検討する。 この実験系を基盤に、脳内において報酬情報を伝えると考えられるオクトパミンニューロンの活動の習慣記憶形成への関わりについての研究を進めていく。
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Remarks |
水波研究室ウェブサイト
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Research Products
(13 results)