2021 Fiscal Year Annual Research Report
Neuronal and hormonal mechanisms that coordinate events of animal metamorphosis
Project/Area Number |
19H03262
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
笹倉 靖徳 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10400649)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ホヤ / 変態 / GABA / GnRH / 甲状腺ホルモン / Gタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、GABA, GnRH, 甲状腺ホルモンの3種の液性因子が紡ぐ協調的作用によってホヤの変態が制御される機構の解明を目指している。本年度の研究から、ホヤ変態の特に開始の制御機構の詳細がおおよそ判明した。まず、Gタンパク質としてGqタイプが必要であることを明らかにした。Gqシグナル経路を構成するPLCbeta、IP3受容体もまた変態開始に必要であり、このパスウェイを通じてカルシウムイオン上昇が付着突起神経で生じると強く推定される一連の結果を得た。Gsは遺伝学的にこのGqパスウェイの下流に位置し、付着突起でcAMPが上昇することが、変態開始を決定づける重要なイベントであることを解明した。引き続き、Gq経路と同じく変態開始の上流に位置する神経伝達物質のGABAとの関連を調査している。また、付着突起が固着の物理的な刺激を感受する機構を調べ、この機構に関わる可能性があるカルシウムチャネルを見いだした。 成長制御と甲状腺ホルモンについては、甲状腺ホルモン合成酵素であるTPO遺伝子がホヤの甲状腺相同領域である内柱だけでなく、間充織でも発現することを共同研究者と共に発見した。2つの発現領域の両方でのTPOの機能が、変態中の成長、特に細胞増殖に必要である可能性を追求し、おおむね支持する結果、特にTPOはS期の進行を促進する結果を得ている。また、変態開始から成長期における遺伝子発現プロファイルをRNA-seq技術によって得ており、特に成長制御に関わると予想される発現変動を示す遺伝子のリストを得た。 これら一連の結果に加えて、2021年度は日本発生生物学会における成果発表の他、D-セリンの変態における機能を解明した論文をScience Advances誌に発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度Gqタンパク質の変態への関与を同定したことで、極めて複雑に制御されているホヤの変態開始に関わるプロセスの全体像が見えつつあることと、インパクトの高い論文成果が得られたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度得られた変態制御機構の各作業仮説を証明するための実験を計画している。特にGqによるカルシウムイオン上昇制御におけるGABAの関与、Gq, Gsの活性化に関わるGPCRの同定、TPOと甲状腺ホルモンによる細胞増殖制御、RNA-seqによって得られた変態制御候補遺伝子群の機能を調べ、ホヤ変態の全体像の総合的解明を目指す。
|