2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H03265
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉井 大志 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (50611357)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 概日時計 / 体内時計 / キイロショウジョウバエ / 時間生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
約24時間の環境変化を予測するために、多くの生物は概日時計を持っている。動物においては行動、生理、代謝、内分泌など多くの生物活動に24時間の周期性があることが分かっている。また、多くの動物の概日時計の中枢機構は脳にあることが明らかになっており、特にキイロショウジョウバエでは約150個の脳内神経細胞が概日時計を構成していることが同定されている。本研究では、そのキイロショウジョウバエの150個の時計細胞が、どのような神経回路によって結びつき、その神経回路にどのような生物学的意義があるのかを明らかすることを目指している。 令和元年度にはショウジョウバエストックセンターから取り寄せたGAL4ショウジョウバエトランスジェニック系統を用いて、脳内の特定の時計細胞を操作するための系統の探索を行った。その結果、約60系統の時計細胞で発現するGAL4系統を見出すことに成功した。さらに、時計細胞で活性がある遺伝子プロモーターを用いてsplit-GAL4系統を約10系統作成し、非常に限定された脳時計細胞のみでGAL4活性がある系統の作出に成功した。特に、これまでほとんど研究が進んでいないDN1a時計細胞、LPN時計細胞のsplit-GAL4系統は非常に有用である。複数の国際共同研究者にこれらの系統の情報共有を行っており、共同研究の拡大に努めている。 また、ショウジョウバエの神経活動を可視化するためのイメージングシステムの立ち上げを行った。cAMPに対するFRETセンサーであるEpac1-Camps、 Ca2+センサーであるGCaMPを用いて、それぞれの蛍光の可視化ができることは確認できたことで、来年度の研究につなげることができる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ショウジョウバエの細胞・組織レベルの研究を支えている技術が、GAL4-UASシステムである。現在、時計細胞群の機能解析において使用されているGAL4系統は約10系統ほどであり、実際には特定の時計細胞だけで発現するエンハンサーはほとんどない。そこで、本研究では時計細胞特異的GAL4系統を行い、予想以上の成果を挙げることができた。 また、時計細胞間の生理的な結合・相互作用を検証するために、前シナプス細胞を活性化させた時の、後シナプス細胞内のcAMPとCa2+の変化を計測するためのイメージングシステムの立ち上げを行った。データを取得には至っていないが、システムは立ち上げることができたので計画通りであると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究によって、時計細胞で発現するGAL4系統を約60系統発見することに成功した。このGAL4系統を用いて、神経活動を不活性化させるKir遺伝子(UAS-Kir)を発現させて、行動リズムへの影響を解析する。また、アポトーシス誘導遺伝子を用いて、特定の時計細胞が死んだ場合の影響、さらに特定の時計細胞でのみ時計が不活性化するような系統の場合の影響などを明らかにするために行動解析を行う予定である。 前年度に見出した時計細胞特異的GAL4系統とTrans-Tango法を用いることで、時計細胞に後シナプス結合している細胞を免疫染色することが可能になる。共同研究者とともに、まだ不明な点が多い脳背側に存在する時計細胞群dorsal neuronsの後シナプス細胞の同定を行う。特に、dorsal neuronsが別の時計細胞と接続しているかどうかに注目する。 前年度、神経活動を可視化するためのイメージングシステムを導入した。それを用いて時計細胞間の生理的な結合・相互作用を検証するために、時計細胞で用いられている神経伝達物質を培養中の脳に加えて、後シナプス細胞内のcAMPとCa2+の変化を計測する。 当研究室より、概日時計に関わる新規の神経伝達物質の候補因子が見つかった。本研究のゴールである概日時計の神経回路の解明に重要であることから、その神経伝達物質の突然変異体を用いた行動レベルでの機能解析を進め、新規の神経回路の同定を目指す。
|
Research Products
(10 results)