2021 Fiscal Year Annual Research Report
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19H03265
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉井 大志 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (50611357)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 概日時計 / 体内時計 / キイロショウジョウバエ / 時間生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの生物は約24時間周期の環境変化を予測するために、概日時計を持っている。動物においては行動、生理、代謝、内分泌など含む、非常に広範囲の活動に24時間の周期性が観察される。その概日時計の中枢は脳に存在する複数の神経細胞群(時計細胞)であることが分かっている。キイロショウジョウバエにおいては、時計細胞の正確な数が同定されており、時計細胞間の神経ネットワークは非常に注目度の高い研究である。 キイロショウジョウバエ概日時計の時計細胞間ネットワークを明らかにするために、本年度は概日時計出力因子の機能解析を行った。前年度より解析が続いていたPdf, CCHa1の二重変異体だけでなく、その他の因子の2重変異体、3重変異体の作製を行い、活動リズムの計測を行ってきた。さらに、時計突然変異体との組み合わせも行い、研究を一つまとめる時期に来ている。また、前年度から継続していたSplit-GAL4系統の作製もかなり進んでおり、特定の時計細胞を操作する系統が確立できた。これらの系統を用いて、国際共同研究を進めており、後シナプス結合細胞の探索に貢献することができた。特に、LPN時計細胞群とDN時計細胞群の解析の論文をまとめることができた。その他、複数の国際共同研究に貢献することができ、関連する研究として論文にすることができた。前年度は機器の故障とコロナの影響で、生物発光イメージングはあまり進展がなかったが、本年度は新たな系統の作製に着手し、今後につながる新しい知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していた生物発光イメージングは、新たな系統作製を行い一定の手ごたえを得た。しかし、さらに系統の生物発光を改善しなければならないことも判明した。他の研究室でもうまく行っていないことから、技術的に難しいことは分かっている。Trans-Tango法を用いた時計細胞群の後シナプス結合細胞の探索は、非常に順調に進んでおり、国際共同研究として2報の論文にまとめることができた。さらに、計画していたSplit-GAL4系統の作製も順調に終了し、さらなる研究成果を期待することができる。概日時計出力因子の2重、3重突然変異体を用いた機能解析もほぼ終了しており、次年度には研究成果をまとめることができる。細胞イメージングは思うような結果を得られていないが、その他の実験は順調であり、総合するとやや進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.時計細胞特異的Split-GAL4系統を用いた解析:特定の時計細胞のみを操作するためのSplit-GAL4系統をいくつか開発することができた。これらの細胞群はまだ詳細な機能が解析されていないことから、神経活動を不活性化させるKir遺伝子(UAS-Kir)とアポトーシス誘導遺伝子(UAS-hid)を用いて、行動解析を行う。すでに実験の一部は開始しているが、本年度も継続して行う。さらに、それらの時計細胞群の出力経路を探索するために、Trans-Tango法を用いて後シナプス細胞の同定を行う。もし出力経路が同定できそうであれば、その細胞を操作するためのGAL4系統の探索を行うことも視野に入れている。 2.時計細胞間の生理学的接続の検証:神経活動を可視化するためのイメージングシステムを導入し、試行運転を行った。技術は確立しているが、本研究で行う実験には検出感度が悪いことが判明した。そこで、より高感度な手法を再度検討している。検討が終了次第、cAMPとCaイオンイメージング法を用いて、時計細胞間の接続様式を解析する。ルシフェラーゼ発光を用いた時計細胞活性化の可視化は、まだ技術の確立に至っていない。本年度も引き続き、生物発光を用いたショウジョウバエ系統の作出を目指す。 3.概日時計に関与する新規の神経伝達物質の探索:前年度までに時計細胞で発現している神経伝達物質の網羅的探索は終了して、新規の時計伝達物質を発見している。本年度は、発見した伝達物質のノックダウン系統や突然変異体を用いて、概日リズムにおける機能解析に着手する。また、神経ペプチド群については抗体の作製を行い、その発現量に概日リズムがあるかどうかを検証する。
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Research Products
(9 results)