2022 Fiscal Year Annual Research Report
光合成補助色素フコキサンチンの未知なる生合成系の解明とその誕生の謎を紐解く
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19H03274
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
神川 龍馬 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40627634)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 二朗 久留米大学, 医学部, 講師 (10373094)
宮下 英明 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (50323746)
谷藤 吾朗 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (70438480)
中山 卓郎 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (70583508)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フコキサンチン / ゲノム / トランスクリプトーム / 葉緑体 |
Outline of Annual Research Achievements |
さらにフコキサンチン合成に関与する候補遺伝子推定を進めるため、フコキサンチン合成藻類種(モデル珪藻Phaeodactylumおよび珪藻Nitzschia closterium)をATCC 1525培地での培養実験を行った。両珪藻において細胞増殖が観察され、また継代培養が1年間可能であった。しかし、両珪藻細胞の顕微鏡観察とHPLC解析では、クロロフィル類やカロテノイド類の光合成色素量の低下が顕著であり、フコキサンチン合成関連遺伝子の発現量も低下していると推定された。そこで通常の培地で培養した細胞とATCC 1525培地で培養した細胞の比較トランスクリプトームデータを解析した。その結果、モデル珪藻Phaeodactylumでは700以上の転写産物が、そして珪藻N. closteriumでは1300以上の転写産物がATCC 1525培地での培養で発現低下が有意であった。すなわち、光合成色素量の減少した細胞で発現抑制されていた。一方で、Phaeodactylumでは1400以上もの転写産物が、そしてN. closteriumでは2000以上の転写産物がATCC 1525培地で発現増加が有意であり、これらは光合成色素量の低下により光合成活性が低下した際にも細胞増殖を補助するための遺伝子群が含まれていると考えられる。現在、発現変動が有意であった遺伝子がコードするタンパク質の機能の詳細、局在、関与する代謝経路を確認している。 これまでに同定されているフコキサンチン合成関連遺伝子における5つのパラログについて、遺伝子導入株の作出を行った。現在、それぞれの遺伝子転写産物量をqPCRによって定量を進めている。候補遺伝子のノックダウン効果の特異性に疑義が生じたため、別途、5つのパラログの発現抑制用のベクターを作成中であり、これは来期に予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまでで予定通り候補遺伝子の絞り込みと遺伝子導入を終了させており、また、新たな培養系と比較トランスクリプトーム解析で別の候補遺伝子の探索にも着手できている。遺伝子導入に加えて、ノックダウンの再検証用の遺伝子発現抑制用のベクターも作成できつつあり、本遺伝子の機能解明に向けて着実に進められている。これまでにゲノム解読が完了した従属栄養性珪藻とは別系統の種のゲノム解読に向けたアッセンブル法について、複数のプログラムの比較からどの手法で構築されたゲノム配列を用いるかの方針を決定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
高発現変異体と発現抑制変異体の解析から、候補配列の生理学的機能解析を進める。さらに候補配列を増やすため、色素組成が変動する培養条件を探索し比較トランスクリプトーム解析データの精査を行う。また、情報解析のベースをさらに整備するため別系統の従属栄養性珪藻ゲノム配列の遺伝子同定を行う。
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Research Products
(16 results)