2019 Fiscal Year Annual Research Report
Evolutionary and immunological basis of an insect intracellular symbiosis
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19H03275
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
松浦 優 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教 (80723824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二橋 美瑞子 (長内美瑞子) 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (00422402)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞内共生 / 自然免疫 / 共生細菌 / 菌細胞 / 進化 / ナガカメムシ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、昆虫の細胞内共生における自然免疫系の役割を調べるため、自然免疫系の遺伝子群を対象にRNAi実験を遂行して細胞内共生の成立に与える影響を明らかにする。並行してカメムシ細胞の培養実験系を立ち上げ、細胞内共生細菌の維持機構を細胞生物学実験・イメージング解析するための研究手法の確立を目指す。1)ヒメナガカメムシのトランスクリプトームから免疫系遺伝子の配列を抽出し、対応する二本鎖RNAを設計した。標的の塩基配列に対応するRNAの同時に大量合成する条件を最適化し、数種類を混合して母体に注射する方式を採用した。該当する実験対象を観察するために、蛍光実体顕微鏡を機種選定したのち、購入した。成虫と胚におけるRNAi処理の効果比較のため、Ubx遺伝子のRNAiを施したRNA-seq解析を成虫を用いて追加で実施した。これらのサンプルについて遺伝子発現の変動と共生細菌量の変化を解析している。この結果を胚でのデータと突きあわせることで、菌細胞形成不全個体において発現量が大きく変動する免疫系の遺伝子群をより短期間で絞り込めると予想される。2)先行研究を参考に胚や胚生組織、血球細胞の短期培養技術を導入し、昆虫の培養系を樹立するため、まずは菌細胞が分化中の胚(受精後60ー72時間)を摘出して複数の培養液やバッファー中で生きたまま染色したのち蛍光顕微鏡観察が可能か検討した。15分間の浸透で宿主及び共生細菌の細胞膜は染色されたが、その後の胚発生は進行しなかったため、培養液の再検討が必要と判断された。また、分担者の研究室を訪問して、研究内容に関連する合同セミナーを実施したのち、別種カメムシに用いられている細胞培養に関する技術について情報を交換・収集し、今後の計画を調整するとともに、必要なインキュベーター及び試薬類を購入して次年度以降の実験系立ち上げの準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)については、観察に用いるはずだった実体蛍光顕微鏡に納品されてから本体及び制御ソフトウェアの不具合が生じたため、3回の部品交換及びメーカー本国であるドイツからの2回の本体交換となった。結果的に年度内には使用可能な状態にならず、本格的なRNAi実験及び蛍光観察の見通しを立てることができなかった。よって、その間に別のアプローチで実験と解析を追加して遺伝子のスクリーニングを進めることになった。2)の培養実験については、年度内の実験開始のスケジュール調整が困難となり、分担者との打ち合わせと実験機器・環境の準備をするにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
感染症拡大の影響により研究の実施そのものが困難になっている状況だが、実体蛍光顕微鏡の運用及び実験の開始が可能になり次第、別途追加で実施した遺伝子発現の解析結果に基づいて候補遺伝子を絞り込んだ上でRNAi実験を再開することで、遅れを取り戻すべく務める。培養実験については、分担者との相互交流も困難になっているので、技術指導や情報交換をなるべくオンラインで行うにとどめ、最小限の規模で実験を開始して少しでも多くの予備データを蓄積する予定である。
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