2020 Fiscal Year Annual Research Report
Evolutionary and immunological basis of an insect intracellular symbiosis
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19H03275
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
松浦 優 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教 (80723824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二橋 美瑞子 (長内美瑞子) 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (00422402)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞内共生 / 共生細菌 / 菌細胞 / ナガカメムシ / 脂肪体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞内共生を派生的に獲得したヒメナガカメムシとその共生細菌を主な対象に自然免疫系の遺伝子群の機能解析や細胞培養実験系の立ち上げを行い、細胞内共生の進化の詳細な理解を目指している。本年度も感染症の影響を大きく受けて実験と観察を中断せざるをえず、これまでに取得したゲノム、RNA-seqデータの解析を中心に進めた。ヒメナガカメムシと新たに他3種のナガカメムシから絶対共生細菌の環状ゲノムを決定し、近縁なSodalis属細菌種を含むゲノム系統樹を作成した。Schneideriaの環状ゲノム(541個のCDS)と宿主のRNA-seqとゲノムより栄養合成系を推定した結果、アミノ酸15種、ビタミン類6種を合成できること、特異的なウレアーゼオペロンにより種子から生成される尿素の分解と窒素循環に重要な役割を担うことが予想され、この代謝系の遺伝子のクローニングや発現解析、抗生物質処理後の尿素量解析を進めた。次に、細胞内共生細菌WolbachiaとLariskellaのゲノム配列をメタゲノム解析した。Wolbachia(1.38 Mbp,1231個のCDS)とLariskella(1.7 Mbp,1571個のCDS)の2種はお互い近い系統であり配列が似ているため、完全な分離は困難だが、これらのゲノム中にSchneideriaに欠けている栄養代謝系が補完的に存在することを見出した。また各細菌種の遺伝子配列に基づき定量的PCRを行い、数十コピーの感度で組織別の存在量を検出した結果、どの細菌種も10の6から8乗コピー/個体と高密度で細胞内共生していることが判明した。また、成虫菌細胞のUbx-RNAiのRNA-seq解析により、処理後の菌細胞の高発現遺伝子群が脂肪体組織のそれと非常に似た構成になることが判明し、昆虫の細胞内共生の細胞学的な進化的起源についてきわめて重要な示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
県内の感染症の拡大および緊急事態宣言の影響により予定していた実験を開始しても観察に至る前に何度も途中で中止せざるを得ず、ベンチで行う形式の実験解析を進めることはきわめて困難であった。また研究分担者との共同作業についても年度内の相互訪問の実現は難しく、延期とせざるをえなかった。結果的に、多くの時間をゲノムなどのデータ解析に費やした。
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Strategy for Future Research Activity |
既に卵での発現変動解析で数十に絞り込んでいた免疫関連の遺伝子をさらに重要な数種ごとに落とし込んだ上で、短期間で必要なデータを集めるため、成虫および卵の両方において同時に表現型への影響を観察するとともに、RNAとDNAを両方抽出して、遺伝子発現および共生細菌量の定量を同時に進める。一方で、リモートワーク中に集中的に行ったデータ解析により得た栄養代謝系、任意共生細菌のゲノム、成虫の菌細胞に関する細胞内共生の新たな知見についても解析を早期に完了し、学会発表や論文作成を通して成果の報告に努める。細胞培養系については分担者のノウハウや技術を最大限に活かして初代培養系の立ち上げや有用性の検証にとどめて実験を遂行、学会発表する。
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