2019 Fiscal Year Annual Research Report
擬態花の進化:腐肉・発酵物・キノコに擬態する植物共通メカニズムの解明
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19H03292
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
奥山 雄大 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40522529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 朋子 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (50588150)
末次 健司 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (70748839)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 擬態花 / カンアオイ属 / テンナンショウ属 / RAD-seq / 花の香り / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
送粉共生系において特筆すべき存在として、昆虫が産卵場所などに集まる性質を利用し、その産卵場所を識別するための信号 (色、形、香りなどの組み合わせ) で昆虫を騙し、誘引する擬態花が知られている。本研究では特に日本で多様化を遂げており、かつ擬態花という形質を送粉戦略に採用していると考えられる2つの系統群(ウマノスズクサ科カンアオイ属、サトイモ科テンナンショウ属)に着目し、その擬態様式の自然史を網羅的に調査するとともに、種間比較のアプローチにより擬態進化のメカニズム解明を目指すものである。 本年度は、カンアオイ属において擬態形質に関係する花形質が独立に複数回起源していることを示すための基盤として、日本および台湾で著しい多様化を遂げているカンアオイ属カンアオイ節のほぼ全種についてゲノムワイドな大規模塩基配列データを取得し、高精度な分子系統樹推定を行い論文とした。また種間比較による擬態形質進化のメカニズム解明のため、多くの種について開花時に花からRNAのサンプリングを行った。 また、テンナンショウ属についてはユキモチソウが巧妙なキノコ擬態形質を最近進化させ、キノコショウジョウバエ類を特異的に誘引することで同所的に自生する近縁種マムシグサとの生殖隔離を確立していることを示し、論文とした。またホロテンナンショウをはじめとする複数の種については、特定のキノコバエ類ないしクロバネキノコバエ類が特異的に送粉者として働いていることを明らかにしつつあり、この一部について論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Ecology誌に投稿していた論文の査読者から、 当初想定していなかった補強データの必要性が指摘されたことにより、ユキモチソウ自生地における追加の野外調査を行う必要が生じるた。この論文は本研究計画の土台となるものであり、研究遂行上、ユキモチソウ開花期の4月の野外調査を優先することが不可欠なため、この野外調査を追加し、その後の遺伝子解析については延期して実施する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
カンアオイ属の多くの種およびテンナンショウ属について引き続きつぼみや花の各部位からRNAのサンプリングを行い、RNA-seqを行い系統学的な観点から発現量の比較解析を行う。これによりジメチルジスルフィド等の擬態花を特徴づける花香形質を支配している遺伝子の候補を探索する。また、テンナンショウ属の数種について新規に送粉者の解明を目指し、テンナンショウ属擬態花の送粉者との関係を引き続き調査する。
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