2019 Fiscal Year Annual Research Report
植食性昆虫における餌植物の地理分化に伴う多様化:虫こぶ形成昆虫をモデルとして
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19H03296
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
池田 紘士 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00508880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹部 美知子 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00454380)
山尾 僚 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (50727691)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植食性昆虫 / 地理分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の九州から青森までの森林において、Hamamelis属の種(マンサク)とそれにつく虫こぶ、および中のアブラムシ3種の採集を行った。その結果、これら3種のアブラムシの地理分布は種間で異なることが明らかにされた。また、いくつかの地点では混生している傾向がみられた。これらのサンプルについて遺伝子解析を行い、マンサクおよびアブラムシの系統地理解析を行った。その結果、マンサクでは葉緑体および核の複数領域を検討したが、地理的な遺伝的分化が小さく、あまり十分な解像度では分化パターンを明らかにすることができなかった。これについては、今後の研究の中で検討していく予定である。それに対してアブラムシに関しては、ミトコンドリアのCOI-II領域を調べたところ、サンゴでは遺伝分化がみられなかったのに対し、イボおよびサンゴでは遺伝的な多様性が高い傾向がみられ、種によって傾向が大きく異なることが明らかになった。また、捕食圧の影響について調べるためにイガとサンゴについて、野外にセンサーカメラを設置して調査を行ったところ、サンゴに比べてイガでは食害が多い傾向がみられた。また、これらの虫こぶの主要な捕食者はげっ歯類であることが明らかにされた。さらに、イガとサンゴのサンプルについてRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行ったところ、虫こぶ形成過程の初期と成熟期では発現している遺伝子に違いがあり、また、イガとサンゴの間でも複数の遺伝子において、発現量に違いがみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
野外でのサンプリングは広い範囲で採集を行うことができ、系統地理解析も一定の結果を得ている。また捕食者に関する調査も順調で、予想していた結果を得ることができた。さらに、トランスクリプトーム解析でも一通りの解析を行うことができ、一定の結果を得た。以上のことから、充分な結果が得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き野外調査を行い、サンプルの不足している地域を中心に採集を進めていく。ただし、コロナウイルスの影響によって調査地域を変更せざるを得ない可能性があり、その場合には状況に応じて対処することとする。また、昨年度得られたサンプル、および新たに得られるサンプルに関して、RNAおよびDNAの解析をさらに進めていく予定である。
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