2020 Fiscal Year Annual Research Report
植食性昆虫における餌植物の地理分化に伴う多様化:虫こぶ形成昆虫をモデルとして
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19H03296
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
池田 紘士 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00508880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹部 美知子 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00454380)
山尾 僚 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (50727691)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植食性昆虫 / 地理分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中部地方および東北地方の森林において、Hamamelis属の種(マンサク)とそれにつく虫こぶ、および中のアブラムシ4種の採集を行った。これらのサンプルについて追加でRNA-seqおよび遺伝子解析を行い、これまでのデータに追加して解析を行った。その結果、Hamamelistes属3種のアブラムシの地理分布及び種内変異と、マンサクの系統が対応していることが明らかにされた。また、RNA-seqの解析からは、虫こぶ形成過程の初期と成長期において、葉に比べて虫こぶで高く発現している遺伝子群が複数みられ、それらの中には、防御物質の生成、および成長や成熟に関わるものがみられた。また、この発現量にはアブラムシの種間で差がみられた。 次に、捕食圧の影響について調べるため、中部地方および東北地方の森林で、葉と複数の成長段階の虫こぶを採集し、防御物質の量を比較した。その結果、虫こぶで防御物質の量は多く、特により大きい虫こぶ種で高いことが明らかになった。また、虫こぶの成長速度を調べて種間で比較したところ、より形態が複雑な種のほうが成長速度が速く、捕食にさらされる期間が短いことが明らかになった。また、この防御物質の量と成長速度の種間差は、RNA-seq解析の結果と対応がみられた。これらのことから、齧歯類による捕食圧が一つの主要因となって、防御物質や虫こぶの成長に関わる遺伝子発現パターンの進化が生じ、虫こぶの防御形質の進化がもたらされたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
野外でのサンプリングはかなりの範囲でサンプルがほぼ揃い、DNA解析にもとづく系統地理解析も充分な結果を得ている。また、トランスクリプトーム解析も主要な地域については解析を行うことができた。以上のことから、充分な結果が得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、当初予定していたサンプルの大半を得ているため、今後は不足している地域の野外調査を行い、採集を進める。ただし、コロナウイルスの影響によって調査に支障が出る可能性があり、その場合には状況に応じて対処することとする。また、これまでに得られたサンプル、および新たに得られるサンプルに関して、RNAおよびDNAの解析を、追加する必要があれば追加するとともに、解析の内容を精査して、論文としてまとめる予定である。
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