2021 Fiscal Year Annual Research Report
Adaptive significance of morphologically complex flowers in natural grassland communities
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19H03303
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
丑丸 敦史 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70399327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 博 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (90463885)
岡本 朋子 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (50588150)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 複雑花 / 単純花 / 送粉者 / 花形質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、複雑な形態を持つ花(複雑花)が単純な形態を持つ花(単純花)よりも適応的になる生態学的な条件の解明である。 令和3年度は、菅平高原のスキー場草原の虫媒植物種の花形質データベース(形態、花色、送粉者のデータ)を利用した花形質と主要送粉者の関係について解析を行い、花筒長と花色に相関があり、マルハナバチ類など大型ハナバチに訪花を受ける種とハナアブ類等ハエ目に訪花される種では、形態と花色のセットが有意に異なることを見出し、現在、石井を中心にして結果を論文にまとめている。 また、昨年度、菅平高原スキー場草原において複雑花と単純花を各1種のペア(アヤメとウマノアシガタ)を対象として調査した。この調査では、同種および競争他種の開花密度の送粉者誘引および送粉成功への影響評価調査を行なった。本調査では40mx50mの調査範囲内に開花する対象種の開花の空間分布と密度(範囲を2.5mx2.5mメッシュに区切り、各メッシュを方形区として全開花植物の開花数)を記録した。また対象種を含むメッシュにて、各対象種への訪花観察と訪花後の柱頭の採取を行なった。その結果、単純花であるウマノアシガタの送粉成功は、自種や競合他種の影響を受ける一方で、複雑花であるアヤメでは送粉成功は自種密度や競合多種密度にあまり影響を受けないという仮説を支持する結果を得た。 加えて阪神地区及び菅平の群集で複雑花をつける特定の種について詳細に研究した。まず、左右相称花のツユクサでは花の性的二型による送粉者への適応がみられたこと、筒状花のホタルカズラでは2-3種の長口吻送粉者が補償的に送粉を行なっていること、同様に釣鐘状花のキキョウでは花の形態は送粉者のみならず雨から花粉を守るために適応していることを明らかにし、論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の花形質間の相関が送粉者相との関係で説明でき、より複雑な形質は大型ハナバチ類による送粉と関係していることを明らかにできたことで、研究計画であげた仮説の検証が一部できたと考えられる。また、本研究課題の最大の検証項目である「複雑花では開花密度が低い場合にでも送粉成功が安定して得られている」ことを示唆するデータが揃いつつあることで、概ね研究の計画は順調と言える。ただし、コロナ感染症の影響で予定していた調査のキャンセルがあり、一部研究(花香の調査や密度の影響調査)に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに取得した花形質データの解析から複数の研究課題の論文化を進める予定である。 また、今年度まで収集する開花密度の繁殖成功への影響を複雑花と単純花で比較する研究を複数種のデータから行う予定にしている。これにより、本課題の目的である仮説「複雑花は、定花性の強い送粉者へ共生相手を限定することで、植物の種多様性が高く、開花(個体)密度の低い環境下で同種内送粉を確実にするための適応である」の妥当性について詳細な検証を行う。
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