2020 Fiscal Year Annual Research Report
サバンナヒヒにおける捕食者対策:群れ形成のダイナミクスと意思決定方法の解明
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19H03312
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
松本 晶子 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (80369206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粕谷 英一 九州大学, 理学研究院, 准教授 (00161050)
河村 正二 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40282727)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 集団生活 / 意思決定 / 捕食圧 / リーダーシップ / GPS |
Outline of Annual Research Achievements |
動物は一般に、群れを形成することで捕食者対策上の利益を得る。霊長類の群れも捕食者対策として形成されたと考えられるものの、捕食される危険が高い移動時や夜間の個体の直接観察が困難なために、群れ形成と捕食圧との関わりは未解明であった。そこで、GPS(全地球測位システム)ロガーと暗視ビデオを野外調査に導入することで、群れの全個体の空間的位置を終日計測することができると考えた。本研究の目的は、この新たな記録法の導入によって、霊長類の群れが捕食圧によってどのように進化したのかを明らかにすることである。 2020年度は7-8月に、研究代表者と海外共同研究者による合同野外調査をケニアで実施する予定にしていた。しかし、COVID-19のために海外渡航が困難になったことから、2019年度に実施した予備調査のデータと2014年から収集してきた群れの長期位置データの両方について解析することとした。これにより、群れ形成の社会的な解明だけでなく、生息環境の生態的な要因についても解析できることとなった。 2019年の予備調査のデータを解析した結果、GPSの容量上の制限が判明したため、日中の位置だけを本研究では分析対象にすることとした。昼行性の非ヒト霊長類にとって、異なる睡眠場所へ移動することは、捕食者からの保護、寄生虫感染のリスクの低減、空間的・時間的に不均質な食物や水への接近など、複数の利益をもたらすと考えられる。しかし、移動中や睡眠場所で捕食される危険があることから、どの場所を利用するかの選択は重要である。そこで、降雨量の季節性がアヌビスヒヒ(Papio anubis)の睡眠場所選択に与える影響を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年4月より外国人ポスドクを雇用し、分析を開始した。ヒヒの群れがどの睡眠場所をどの程度利用するのかに雨量の季節性が関係していることを明らかにした。成果は、論文と学会発表をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
海外調査のためには相手国の複数の機関から調査許可を得る必要があるが、取得に時間がかかる。海外調査が可能になり次第、調査を再開できるように準備する。しかしながら、調査許可書には有効期間や獣医の確保などから本調査までに時間がかかる場合は、予備調査の解析をすすめる。 GPS技術には使用に伴ういくつかの制限があり、バッテリー消費は重要な制限の1つである。2019年の予備調査のデータを解析したところ、今後予定している日中と夜間の両方の位置を記録するには、動物研究倫理指針に従ったGPSの重量では足りないことが判明した。そこで、日中の位置を分析対象とすることに修正した。 今後の研究として、捕食者にとって危険な群れの中の位置に誰がいるのかを明らかにする。また、移動を主導する個体の属性を明らかにすることをめざす。
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Research Products
(7 results)