2020 Fiscal Year Annual Research Report
ニューロン新生におけるPax6-FMRPフィードバック制御機構の性差
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19H03318
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大隅 典子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00220343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲田 仁 東北大学, 医工学研究科, 特任准教授 (60419893)
吉川 貴子 東北大学, 医学系研究科, 助教 (90727851)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳発生 / 雄雌差 / Pax6 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトにおいて脳の大きさや形態、脳の病気の発症頻度について男女差があることは広く知られているが、このような性差が脳の発生発達や維持の過程においてどのように生まれるのかに関して、性ホルモンの影響以外のメカニズムついてはほとんど謎である。そこで本研究「ニューロン新生におけるPax6-FMRPフィードバック制御機構の性差」では、脳の発生発達維持の根本であるニューロン新生(神経幹細胞の増殖と分化)を制御する転写制御因子Pax6と、重篤な精神遅滞の原因因子FMRPに着目し、胎生期のマウス脳における遺伝子発現の性差を生み出す分子メカニズムを解明することを目的としている。今年度は、精神遅滞やASDを主症状とする脆弱性X症候群の原因遺伝子であるFmr1によってコードされるFMRPタンパクが結合するmRNAについて、RNA免疫沈降法注と次世代シーケンスを組み合わせた手法(RIP-seq法)を用いて網羅的に探索した結果、知的障害や自閉症、神経新生に関連する分子が多数見つかった。このなかには転写因子をコードし、神経発生に重要な役割を果たすPax6が含まれていた。また、R1年度の繰越しとして行った雌雄のマウス胎仔脳を用いたRNA-seqにより得られたデータをもとに、胎生期に遺伝子発現量に雌雄差が認められる遺伝子を同定できた。本研究は、発達障害やアルツハイマー病等、ニューロン新生の軽微な異常が背景にあり、性差が存在する精神神経疾患に関して、病因病態の理解や将来の治療法開発に繋がることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R2年度は、マウス胎仔脳(大脳皮質原基)を用いてRIP-seqを行い、FMRPタンパクが結合するmRNAを網羅的に探索した結果、知的障害や自閉症、神経新生に関連する分子が多数見つかり、論文として発表した(Casingal et al., Mol Brain, 2020)。これらの条件を満たすFMRP標的mRNAの中には、転写制御因子をコードするPax6が含まれていた。さらに、R1年度に遅れていた雌雄のマウス胎仔脳を用いた遺伝子発現解析について、マウス胎仔脳(終脳)を用いたRNA-seqを実施することができ、雌雄で発現量に差が認められる遺伝子を同定しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
FMRPの標的mRNAとしてPax6が含まれており、FMRPがどのようにPax6の翻訳制御に関わるのかについて、Pax6 mRNAとの結合部位を同定するとともに、FMRPとPax6 mRNAの結合が翻訳によるタンパク生成を亢進するのか、抑制するのかについルシフェラーゼ(Luc)アッセイにより検討する。さらに、このようなゲノムDNA中のPax6自身の制御領域に、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術により変異を入れることによりFMRPとの結合を阻害したマウス個体を作製し、大脳皮質構築の様態、神経機能、行動レベルの解析を行う。
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Research Products
(6 results)