2021 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms for forgetting in olfactory learning in C. elegans
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19H03326
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石原 健 九州大学, 理学研究院, 教授 (10249948)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 記憶 / 忘却 / 遺伝学 / 線虫 / 想起 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)前年度に同定した、「記憶の忘却を促進する神経ペプチド」について、受容体を同定することを目指した。先行研究に基づき、受容体候補遺伝子をゲノム編集によって変異を導入した株では、「神経ペプチド」と同様に忘却が起きなかった。この受容体は、線虫から哺乳類まで広く保存されている分子であり哺乳類ではそのリガンドも知られている創薬ターゲットの1つである。一方で、記憶に関わる機能は知られていない。さらに、哺乳類では、記憶中枢の1つであると考えられている海馬での発現も知られているが、そこでの機能は知られていないことが分かっている。これらのことから、忘却を広く制御している受容体が同定されている可能性が示唆されたと考えている。 (2)介在ニューロンが適切に忘却をするために必要であることを示してきた。この介在ニューロンが機能しない変異体においても、記憶痕跡が忘却からの快復後には失われていることが分かった。このことは、条件付けによって神経回路の使われ方が変化して(機能回路の可塑性によって)忘却が制御されている可能性があることを示唆している。 (3)忘却の解析から、前年度に想起を制御するシグナル経路がある可能性を同定した。そのセカンドメッセンジャーがいつ働いているかを解析したところ、条件付け前に変化していることが、条件付け後の記憶の維持に重要な可能性がわかった。 (4)頭部全中枢神経系を立体的に撮影できる顕微鏡システム(4Dイメージングシステム)によって、NeuroPAL株(Hobert博士より供与)を用いている。これと並行して、神経活動の測定のために、XCaMPGを用いることとした。XCaMPは、他のカルシウムイオンプローブに比べて応答速度が速いこと、一波長励起1波長蛍光が可能であることなどから、優れたプローブである。本年度は、これを用いて、細胞同定と活動観察のシステムの確立を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)忘却を促進している神経ペプチドの受容体の同定に成功した。このペプチドの受容体は、高等動物も含めて保存され、海馬などでの発現も知られているが、記憶・学習の制御への関与は知られていない。また、その変異体には、これまでのところそれ以外の表現型は観察できていない。忘却を特異的に促進するペプチドとその受容体の機能から、大きな忘却システムの総合的な理解への糸口が見つかったと考えている。忘却を特異的に促進する神経伝達物質はこれまでに同定されておらず、私達が同定した分子が最初のものであると考えている。 (2)想起を制御するセカンドメッセンジャーがいつどこの神経細胞で働くかを同定することができた。 (3)線虫の全脳イメージングシステムにおいて、細胞のより精密な同定とともに、頭部神経系を解析するためにより高速で感度が良いカルシウムプローブを導入することができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)忘却を促進する神経ペプチドとその受容体を同定できたので、それが何時どのように祈祷しているかを解析する。 (2)想起を制御するセカンドメッセンジャーがどのように想起を制御しているのかメカニズムを明らかにする。 (3)4Dイメージングシステムを用いて、条件付け前後にどのように神経回路の可塑性が起きているかを明らかにする。
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