2020 Fiscal Year Annual Research Report
代謝機能の光操作/光計測による脳情報解析と病態制御
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19H03338
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 広 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20435530)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グリア細胞 / アストロサイト / 代謝 / 乳酸 / シナプス伝達 / 細胞内pH / 細胞内Ca |
Outline of Annual Research Achievements |
生体には、神経・グリア・血管・代謝・免疫など、多数のネットワークが張り巡らされている。各ネットワークは、それぞれの法則で稼働しているが、我々がひとつの個体として整合性のある活動をするには、これらのネットワークを束ねるシグナルが不可欠である。これまで、脳というひとつの組織の中の複合ネットワークに着目し、グリア細胞こそが、脳内の全てのネットワークを束ねている存在であると考えるに至った。アストロサイトの代謝回路の変化は、即、神経回路の動作を左右し、学習・記憶・行動といった脳の高次機能にまで影響を与える。本研究では、アストロサイトの担う代謝機能を光操作することで、脳の複合ネットワークと、それを束ねるシグナルを解明する。生体を流れる伝達物質や代謝産物等の情報因子のフローを光計測する方法と組み合わせ、代謝フローの障害・破綻にともなう脳病態・精神疾患の発症メカニズムも明らかにする。細胞内外のイオン濃度変化、伝達物質濃度変化に加えて、代謝産物(ATP、乳酸、ピルビン酸)等も、情報を担う因子として捉えるべきだと申請者は考える。これらの因子が脳内局所環境を変化させている場面では、神経細胞ではなくグリア細胞の活動が大きく関与している。しかし、いかんせん、脳内局所環境の変化は電気信号として計測できる形で顕在化しないので、これまで、この情報の流れを把握することは困難であった。そこで、本申請研究では、新規FRET蛍光センサータンパク質を用いて、細胞内の生体分子のダイナミックな動態を計測する技術を開発した。細胞内外の生体分子の流れ(フロー)をマルチモーダル計測し、脳内情報処理の仕組みを新たな視点で解明する研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アストロサイトから神経細胞に、代謝産物が供給される過程に注目する。代謝産物は、単に、神経細胞の生存を支えるだけでない。本研究代表者は、神経細胞の担う情報処理を、アストロサイト由来の代謝産物の多寡が制限、あるいは制御していると考えている。本研究では、光操作技術を活用して、アストロサイトから神経細胞への乳酸供給のメカニズムと、神経情報処理への影響を解析することを主軸とする。特に、アストロサイトでのpH変化にともなう乳酸の生産と放出の過程に注目する。そこで、pHセンサー蛍光タンパク質を発現した遺伝子改変マウスを作製。周囲の神経細胞の発火にともない、アストロサイトが脱分極し、ナトリウム・炭酸水素イオン共輸送体(NBC)が働いて、HCO3-が取り込まれることにより、細胞質がアルカリ化することが示された。細胞質を光操作によりアルカリ化することで、ミトコンドリア内外のpH勾配を解消させる細胞外に乳酸が放出されることも示された。一方、アストロサイトのアルカリ化は、アストロサイトからのグルタミン酸放出を抑制する。小脳におけるアストロサイトのpHを光操作したところ、短期的な効果と長期的な効果が相反することが明らかになり、グルタミン酸等の古典的伝達物質と乳酸等の代謝産物とで、それぞれ、脳内情報処理に対して異なる役割を果たすことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、アストロサイトにおける乳酸生産、および、神経細胞でのATP生産を光計測する方法を用いる。生きている動物に光ファイバーを挿入して、脳内活動をモニターする方法を用いて、まずは、過剰なエネルギー消費のともなうてんかん発作時の代謝産物動態を追跡する。過剰な過興奮を長期に持続するには、アストロサイトからのエネルギー供給の促進が必要であると考えられる。キンドリング過程を経て、てんかんが重篤化するにともなう、アストロサイトの機能変化を追跡する。なお、当研究室を含め、ファイバーフォトメトリー法により脳内情報を光計測する方法は広く実施されているが、蛍光シグナルを読み解く解析方法に大きな進展がいくつもあった。これにより、ひとつの蛍光センサーを使うだけでも、多くの脳内情報を引き出すことが可能となった。また、逆に、脳梗塞等において、エネルギー供給が止まった場合のアストロサイトの機能変化と代謝産物の変化を調べる。このような極端状況におけるエネルギー授受のメカニズムを調べることで、生理的な条件でも働く仕組みの要素を見出すことを目指す。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Intracelltoular ATP levels in mouse cortical excitary neurons varies with sleep-wake states2020
Author(s)
Akiyo Natsubori, Tomomi Tsunematsu, Akihiro Karashima, Hiromi Imamura, Naoya Kabe, Andrea Trevisiol, Johannes Hirrlinger, Tohru Kodama, Tomomi Sanagi, Kazuto Masamoto, Norio Takata, Klaus-Armin Nave, Ko Matsui, Kenji F. Tanaka & Makoto Honda
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Journal Title
Communications Biology
Volume: 3
Pages: 491
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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