2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of novel boron carrier utilizing amino acid transporters specific for glutamine addiction of cancer cells
Project/Area Number |
19H03352
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
永澤 秀子 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (90207994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 祐 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (10600207)
辻 美恵子 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (40709721)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕捉療法 / ホウ素クラスター / グルタミン中毒 / がん代謝 / LAT1 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホウ素中性子捕捉療法 (BNCT) の実用化のために、腫瘍細胞選択的に効率よく10B原子を集積させるホウ素キャリアの開発を目指している。腫瘍の代謝リプログラミングによるグルタミン中毒というがんの特徴に着目し、グルタミン依存性の高い悪性腫瘍細胞に強発現するトランスポーターのLAT1を標的としてその輸送基質ミミックのホウ素キャリアの開発に取り組む。LAT1輸送基質の特徴は、大型の置換基をもつ中性アミノ酸であることから、疎水性ファーマコフォアとしてカルボランなどのホウ素クラスターや芳香環を導入した非天然型アミノ酸を設計し、アルキンとデカボランのマイクロウェーブ反応による多様性指向合成により、複数の候補化合物を得た。T98G細胞にそれらの化合物を処理して抽出し、ICP-AESにて細胞へのホウ素取り込みを評価し、有望候補としてBC-2を得た。 本化合物は、用量依存的な取り込みを示し、同一投与量(10 μgB/mL当たり)で比較したところ、既存のLAT1依存的ホウ素キャリアであるL-BPAの10倍以上高い取り込み量を示した。T98G対するBC2の処理時間と細胞内ホウ素濃度を調べると、2時間で最大に達し、20時間まで維持されていることが分かった。二時間の処理で、投与量を二倍にしたところ、取り込み量は2.5倍に向上した。T98G細胞における中性子殺細胞効果の増強率を調べたところ、BC-2(20 μgB/mL)における10%生存率を与える放射線量D10 は0.1 Gy、Enhancement Ratio(ER)は34.8であり、L-BPA(10 μgB/mL)(ER=1.29)の30倍であった。以上により、BC2は新規ホウ素キャリアとして有望と考えられたので、現在取り込み機構やモデル動物における体内動態の検索を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LAT1輸送基質の特徴は、大型の置換基をもつ中性アミノ酸であることから、疎水性ファーマコフォアとしてカルボランなどのホウ素クラスターや芳香環を導入した非天然型アミノ酸を設計し、アルキンとデカボランのマイクロウェーブ反応による多様性指向合成を行い、複数の候補化合物を得た。T98G細胞にそれらの化合物を処理して抽出し、ICP-AESにて細胞へのホウ素取り込み量を測定した。 カルボラン誘導体BC-1-4またはBPAを10 μgB当量/mL投与し、20時間処理した後、細胞内ホウ素濃度を比べたところ、BC-2が最も高く、BPAの10倍以上高い値を示した。BC-2を用いて、処理時間依存的なホウ素取り込み量の変化を調べたところ、細胞内ホウ素濃度は2時間で最大となり、20時間まで維持された。そこで取り込み時間を2時間とし、20 μgB/mLで細胞処理した場合、細胞内ホウ素量は645 ngB/106 cellとなり、10μgB/mL投与の2.5倍であった。次に、化合物の中性子増感能を評価するために、T98G細胞を10または20 μg10B/mLのホウ素キャリアで2時間処理した後、熱中性子を照射し、生存曲線を求めた。各種カルボラン誘導体存在下で中性子の殺細胞効果は有意に増強され、中でもBC-2存在下で最も強い増強効果が得られた。結果、BC-2(20 μg10B/mL)のD10 は0.1 Gy、ERは34.8で、L-BPA(10 μg10B/mL)(ER=1.29)の30倍であり、有望なホウ素キャリア候補分子であると考えられた。ホウ素クラスターのスケールアップ合成法として、フロー反応によるアルキンとデカボランの縮合反応について条件の最適化を行った。この方法に従って、担癌マウスモデルにおける体内動態の検討のため、スケールアップ合成を実施し、グラムスケールのホウ素キャリア候補物質を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
新規ホウ素キャリアがLAT1依存的な取り込み機構であるかを調べるため、LAT1ノックダウン細胞、及び強発現細胞を構築し、それらを用いて取り込み量の比較や、LAT1阻害剤による競合実験などを行う。 担癌マウスモデルにおけるBC2の体内動態を調べる。その結果に基づいて、体内動態の向上を目指した分子修飾を行い、再び、細胞内取り込み及び、体内動態検索を行う。このような検討を繰り返して、in vivoで使用可能な最適候補分子を絞り込み、in vivo中性子増感効果の評価を行う。 昨年度からはじめたフローケミストリー合成によるカルボラン構築法及び精製方法を確立する。マイクロフロー合成法は条件を最適化できれば、フロー時間を変えるだけでどのようなスケールにも対応可能な方法であることから、実用化に向けたプロセス検討として有用である。
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