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2020 Fiscal Year Annual Research Report

神経の栄養プログラミング機構の解明

Research Project

Project/Area Number 19H03367
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

小幡 史明  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (40748539)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywordsショウジョウバエ / DOHaD / アミノ酸 / ATF4
Outline of Annual Research Achievements

食事(餌)は、栄養組成を規定する。発生期の食餌が、個体の生理状態を不可逆的に変化させる例が知られているが、そのメカニズムは不明である。これまでの研究から、発生期のショウジョウバエにチロシン特異的な制限をかけた場合、飢餓応答遺伝子である4E-BP/Thorが脂肪組織において誘導されることがわかった。チロシン制限下におけるThor誘導を担う因子を遺伝学的に解析したところ、ATF4がその責任因子であることが明らかとなった。ATF4 の活性化をみるレポーター系統の解析から、ATF4の活性は脂肪体に特異的に上昇していることが分かった。この現象の生理的意義を探索するため、タンパク質制限をおこなった。タンパク質制限を行った幼虫の脂肪組織ではATF4が活性化することを見出したが、興味深いことにこれはチロシンのみを摂食させることによって抑制されることが分かった。したがって、食餌中のチロシンを感知する事でタンパク質を感知する可能性が浮かび上がってきた。
さらにチロシンがATF4を活性化する分子機構をさらに解明する目的で、本現象が哺乳類にも保存されているかをマウスおよびヒトの培養細胞を用いて解析した。その結果、チロシン制限によってATF4が活性化することがわかった。
一方、栄養制限をかけた個体については一般に腸内細菌叢の変化が認められる。また、腸内細菌は宿主の自然免疫を活性化させることで間接的に宿主の生理状態に影響する。発生期に腸内細菌が変化するとそれが成体に引き継がれ健康寿命が変化すること、それが自然免疫を介したプリン体代謝物に影響を与えるが明らかとなった。また、発生期特異的にの自然免疫経路の遺伝学的な活性化を引き起こしたところ、成体において飢餓耐性、中性脂肪蓄積、摂食量の低下、寿命の短縮など種々の生理変化がある事が明らかとなってきた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

昨年度までの研究で明らかとなってきたチロシン制限による個体の生理変化について、さらにメカニズムが明らかとなってきた。また、チロシン制限が、タンパク質制限時に起こる事を部分的にもしており、一方、タンパク質制限時にチロシンを摂食させる実験から、この現象が、チロシンの特異的な制限という生理的に稀な状態だけでなく、タンパク質全般の摂取量低下時に起こることのメカニズムを理解することにつながっていることがわかり、生理的な意義が飛躍的に上昇した。哺乳類の培養細胞での解析も進み、一般化できる可能性も大幅に増加し、さらなるメカニズム解析が期待される。
栄養を突破口として、自然免疫の寄与が明らかとなってきたことも、本研究が当初の予想を超えて発展していることを示唆している。特に神経限定的な自然免疫応答の活性化が、個体の不可逆的な生理変化、すなわち神経プログラミングを起こすことが明らかとなり、今後の解析に期待が高まる。

Strategy for Future Research Activity

次年度では、チロシン制限によるATF4活性化機構をさらに遺伝学的に同定する。ショウジョウバエの脂肪組織におけるRNAiスクリーニングや、哺乳類培養細胞を用いたsiRNAスクリーニングを行なって、その分子機構を詳細に明らかにしていく予定である。トランスクリプトーム解析や種々の生理解析によって、ATF4が制御する生理変化を記述するとともに、遺伝学的解析によってその生理的意義を解明する。また、発生期栄養制限をした後の成虫でのトランスクリプトミクス解析等を通して、不可逆的な代謝生理変化についても解析し、栄養プログラミング機構についても解析を進める。
これに加えて次年度では、腸内細菌や自然免疫によるプログラミング機構の解析も進める。栄養制限下での腸内細菌叢の変化を記述し、栄養と腸内細菌の関係性についても解析する。神経における自然免疫活性化をおこした後、成虫で観察される飢餓耐性や代謝変動を指標として、その分子機構をRNAseqを主体とした遺伝子変動や、変動遺伝子の遺伝学的操作によって明らかにする予定である。また、発生期に起こる変化と、それがどのように成体の神経活動・回路、あるいは個体の摂食量・行動・睡眠サイクルなどに影響するかを詳細に調べる。

  • Research Products

    (3 results)

All 2020

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] Gut Bacterial Species Distinctively Impact Host Purine Metabolites during Aging in Drosophila.2020

    • Author(s)
      Yamauchi T, Oi A, Kosakamoto H, Akuzawa-Tokita Y, Murakami T, Mori H, Miura M and *Obata F.
    • Journal Title

      iScience

      Volume: 23 Pages: 101477

    • DOI

      10.1016/j.isci.2020.101477

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] ショウジョウバエ遺伝学を用いたアミノ酸生物学2020

    • Author(s)
      小幡史明、小坂元陽奈、三浦正幸
    • Organizer
      第43回日本分子生物学会年会
  • [Presentation] 非必須アミノ酸がもたらす栄養応答と寿命制御2020

    • Author(s)
      小坂元陽奈、三浦正幸、小幡史明
    • Organizer
      第43回日本分子生物学会年会

URL: 

Published: 2021-12-27  

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