2019 Fiscal Year Annual Research Report
マスト細胞における分泌顆粒の『不均質性』とアレルギー応答の『多様性』に関する研究
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19H03369
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鈴木 亮 金沢大学, 薬学系, 教授 (00344458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平嶋 尚英 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 教授 (10192296)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アレルギー / マスト細胞 / 開口放出 / 分泌顆粒 / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
アレルギー疾患は、発症部位、病態、重症度など様々な疾患症状を示す上に、症状が変化することも特徴である。このようにアレルギー疾患は、「多様性」に富んでいるため、根治療法が存在しないのが現状である。また、アレルギー反応に重要な役割を担っているマスト細胞の個々の分泌顆粒では、顆粒が一様ではなく、「不均質性」が存在していることが、我々の研究から明らかになっている。 本研究は、マスト細胞の分泌顆粒に存在する顆粒の「不均質性」に着目し、分泌顆粒の形成、外来刺激情報の認識、分泌反応に関する分子・細胞レベルでの解析や各種アレルギー疾患モデルを用いることによって、分泌顆粒の「不均質性」とアレルギー応答の「多様性」の関係ついて追究した。① 顕微光学技術を用いて個々の顆粒内容物(ヒスタミン、サイトカインTNFα、ケモカインCCL2等)と分泌機能蛋白質SNARE(soluble NSF attachment protein receptorファミリー等)の局在解析を行った。② Whole-mount 3D組織イメージングを用いて組織内マスト細胞の顆粒含有物質および分泌機能蛋白質の同定と局在解析を行った。③ 先の局在解析で得た分泌機能蛋白質のノックダウン細胞の樹立と分泌反応の解析を実施した。④ 分泌制御因子について、Phos-tagシステムを用いたリン酸化を指標にした活性化機構について追究した。⑤ 各種バイオセンサー(pHluorin等)と標的分子のキメラ遺伝子の作製と顕微光学技術を駆使した刺激情報依存的トラフィッキングと膜融合機構の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究の実施によって、以下のような研究成果を得た。はじめに、マスト細胞の個々の分泌顆粒の顆粒内容物(ヒスタミン、サイトカインTNFα、ケモカインCCL2等)や発現する分泌機能蛋白質について、顕微光学技術を駆使して追究したところ、測定した顆粒内容物では含まれる顆粒サイズにおいて違いが生じており、発現する分泌機能蛋白質(VAMP等)のサブファミリーも異なっていた。また、親和性の異なる抗原を用いて、刺激応答に伴う分泌機能蛋白質(VAMP)のリン酸化を指標にした活性化状態の解析を行ったところ、高親和性および低親和性抗原の場合において、VAMPのサブファミリー間でリン酸化反応に違いが生じていることが分かった。さらに、分泌機能蛋白質VAMPのノックダウン細胞を樹立することに成功した。ノックダウン細胞を用いた解析から、VAMPサブファミリーの1つにおいてノックダウンをすることで、顆粒サイズに違いを生じさせている可能性が示唆された。また、刺激の違いによる細胞応答(開口放出)の違いを明らかにするために、SNARE蛋白質とpH感受性蛍光蛋白質(pHluorin)のキメラ遺伝子など開口放出バイオセンサーの作製を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果をさらに詳細に解析することによって、アレルギー応答の「多様性」メカニズムを明らかにする。具体的な研究項目に関しては、以下の項目に従って研究を進めて行く。①最優先事項として、昨年度実施した研究の再現性を含め多角的な視点からデータの解析を継続する。②個々の顆粒間や顆粒内・外膜での構成脂質成分(PC、PE、PS等)の不均質性について、生化学的・顕微光学的解析技術を用いて追究する。③分泌顆粒の成熟に伴って変化する顆粒内プロテアーゼに着目し、成熟マーカープロテアーゼと顆粒内容物や分泌機能蛋白質を同時に解析し、顆粒成熟と不均質性との関係を明らかにする。④外来刺激情報(親和性等)に伴う分泌機構を明らかにするため、単一分泌顆粒レベルでのシグナル認識・識別メカニズムを追究する。⑤siRNAやshRNAライブラリースクリーニングにより、分泌蛋白質及びその制御因子を同定する。⑥次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子解析から顆粒の形成、及び刺激情報の認識・識別メカニズムを解明する。⑦プロテオGUV/SUV(Giant/Small Unilamellar Vesicle)リポソームを用いた人工膜分泌モデルの作製と蛍光共鳴エネルギー移動法を用いた膜融合機構について解析する。⑧先のIn vitroでの研究成果をふまえ、in vivo研究への展開を図る。同じ刺激物質で異なる疾患モデル、異なる感作や刺激方法で作製した疾患モデルなど、各種疾患モデルを用いて、アレルギー応答の「多様性」メカニズムを解明する。
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