2019 Fiscal Year Annual Research Report
特異体質性薬物性肝障害発症の個体差の決定因子の解明と予測試験系の開発
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19H03388
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横井 毅 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (70135226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
織田 進吾 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (10725534)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 特異体質性薬物性肝障害 / トログリタゾン / 動物病態モデル / 肝障害発症機序 / 胆汁うっ滞性肝障害 / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
1)特異体質性薬物性肝障害(Idiosyncratic drug-induced liver injury, IDILI)の代表として知られる起因薬であるトログリタゾンの動物モデルについては、長年多くの研究者によって試みられてきた。本研究において、遂に動物モデルを作出することに成功し、その発症機序の一端を明らかにすることができた。すなわち、300 mg/kgの被験薬を経口投与でモデルを作成した。肝mRNAを用いた網羅的な遺伝子発現解析によって、JAK/STAT経路の関与が強く示された。しかし、これはidiosyncraticに限らず、他のDILIにおいても既知の経路である為に、IDILIを最終的に説明した事にはならず、さらなる検討を実施中である。すなわち、ハロタン誘導性DILIと並行して、idiosyncraticに起因する遺伝子発現変動を検索中である。 2)先に我々は、DILI動物モデルについて、血漿miR-143-3pおよびmiR-218a-5pレベルは、胆汁うっ滞ラットでは用量依存的に増加したが、肝細胞傷害では増加しなかったことから、バイマーカーとしての可能性を提唱した。本研究では、その詳細な評価研究をおこない、(1)miR-218a-5pは胆管細胞増殖の抑制に関与している PPP1CBおよびPPP2R5Aの発現を阻害することにより、胆汁うっ滞の病因に寄与する。 (2)miR-218a-5pは、重症度依存的に損傷した胆管細胞から血漿中に漏出し、miR-218a-5pの過剰発現は、ラットの急性胆汁うっ滞性肝障害の根本的なメカニズムの1つである可能性があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)本研究において、遂にトログリタゾン動物モデルを作出することに成功し、その発症機序の一端を明らかにすることができた。しかし、これはidiosyncraticに限らず、他のDILIにおいても既知の経路である為に、IDILIを最終的に説明した事にはならず、さらなる検討を実施中である。すなわち、ハロタン誘導性DILIと並行して、idiosyncraticに起因する遺伝子発現変動を検索中であり、一部については、成功しており近々学会にて発表予定である。 2)エクソゾームのDILIにおける役割については、鋭意検討中である。すなわち、コンカナバリンA誘導性の急性肝障害マウスモデルを用いて、肝障害の重篤度と相関して、末梢血中で増加する。しかし、これはヘパトサイト由来のエクソゾームではなく、マクロファージ由来であるを明らかにした。肝障害発症時にマウス血漿エクソゾームには、肝障害症状を軽減する作用があることも見出した。さらに、in vivoにおいて、その作用の評価研究を推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
主たる申請課題の一つであるIDILIのおけるエクソゾームの役割についての研究は順調に進捗してきており、今年度末には投稿し、来年度には公表できる予定である。具体的には、コンカナバリンA誘導性の急性肝障害マウスモデルを用いて、免疫関連の末梢血由来細胞がエクソゾームの情報伝達に重要であることを、in vitroのみならず、in vivoマウスモデルにおいても、肝障害の軽減を証明することで、エクソゾームの役割を明確に示す予定である。さらに、本年度のトログリタゾンIDILIモデルの作出と公表の過程において、さらなる新規の発症機序を提案できると考えられるデータが得られ、現在鋭意検討中である。これについても、動物モデルでの証明を経て、来年度には公表できると考えている。トログリタゾンの新規発症機序がさらに一般的で普遍的な機序であるかの検討をさらに推進する予定である。以上、当初の予定以上の進捗状況である。
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