2020 Fiscal Year Annual Research Report
患者フレンドリーな核酸医薬を実現する核酸経口剤化技術の新規基盤構築
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19H03393
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
斯波 真理子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 非常勤研究員 (70271575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橘 敬祐 大阪大学, 薬学研究科, 講師 (30432446)
山本 剛史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (80636994)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 核酸医薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子標的薬として近年、核酸医薬の有効性が示されつつあり、臨床化される薬剤も出現してきた。一方で、核酸医薬はその全てが注射薬であり、投与時の痛みとともに、重度の注射部位反応が問題となっており、安全性・低侵襲性・利便性に立脚した経口薬の開発が望まれている。本研究においては、申請者の専門である家族性高コレステロール血症(FH)ホモ接合体を対象疾患として、より安全で使いやすい、経口型核酸医薬の新規基盤を構築することを目的とする。 本年度は、1)腸溶性カプセルに封入した核酸医薬の有効性の確認、2)腸管吸収を促進するリガンドのin vitroスクリーニング、を実施項目として計画した。 実際に、1)およそ2.5 mmの腸溶性カプセルに核酸医薬を吸収促進剤とともに封入し、マウスに対して投与試験を実施した。カプセルに封入せずに投与した際には、肝臓における標的遺伝子発現抑制活性は、個体差が非常に大きかったが、それに比べてカプセルに封入した場合では、個体差が小さくなり、比較的安定した結果が得られるようになった。2)腸管吸収を促進するリガンド取得に向けて、ライブラリーを合成し、Caco-2細胞の単層膜培養系を用いて、その評価を行った。しかしながら、期待した吸収促進効果を示すものは取得できず、分子デザインまたは評価系の再検討が必要と考えられた。 本研究で構築した方法を用いることで、経口投与した核酸医薬が標的の臓器において活性を示すことが実際に確認できている。本結果は、皮下注射剤として一般的に開発されている核酸医薬を、より患者の使いやすい剤形にできる可能性を示唆する結果と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、経口型核酸医薬の実現を目指し、核酸医薬の①腸溶性カプセル化、②腸管吸収を促進する分子の探索、③標的組織までの動態制御リガンドの修飾を行ってきた。 ①腸溶性カプセル化については、核酸分子溶解液をカプセルに封入し、胃酸と同程度の酸性条件にて、内包物が漏れ出てこないことが確認でき、当初の計画通りに目的を達成した。 ②腸管吸収を促進する分子について、既知の吸収促進剤が核酸分子に対しても有効であることをCaco-2の単層膜培養系を用いて実証することに成功した。一方で、オリジナルの分子のスクリーニングに関しては、現在のところ、有望な分子の取得に至っておらず、スクリーニング系や使用するライブラリについて再検討が必要と考えられた。 ③標的組織までの動態制御リガンドの修飾については、研究代表者らが開発した肝臓指向性リガンドが、経口の投与ルートでも薬物送達機能を維持し肝臓において核酸医薬の活性を示すことを、マウスを用いた実験にて実証した。さらに、①で開発したカプセル化を適用することで、生体内活性がさらに安定することを見出した。 核酸医薬の経口投与にて標的臓器における活性を発揮する方法を見出すことに成功しているため、全体を通しては、研究の進捗は順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から核酸医薬の経口投与を可能にする方法を見出すことに成功したため、最終年度は、さらに活性を向上させるための腸管吸収促進分子の探索を継続することとする。 一般的に、吸収の良い化合物は脂溶性が高い特徴を持つため、核酸分子の脂溶性を高めることで、その吸収も向上するものと考えられる。したがって、今後の方針としては、脂溶性に着目し分子の選択を行い、核酸分子に修飾した際の膜透過性などについて評価を行う。また、吸収促進分子のスクリーニングについては、そのライブラリのデザインやスクリーニングの系を見直し、再度条件検討を行う。 最終的には、研究終了段階での最適な条件を整理し、実用可能性について検討するものとする。
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