2019 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の形態・極性制御を司る微小管ネットワーク形成の構造基盤
Project/Area Number |
19H03396
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
仁田 亮 神戸大学, 医学研究科, 教授 (40345038)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞骨格 / 微小管 / 重合反応 / 微小管結合タンパク質 / CAMSAP / クライオ電子顕微鏡 / クライオ電子線トモグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞の形づくり、極性形成は、細胞の骨組みである微小管ネットワークがどのように形成されるのかに依存する。そのため、細胞内では微小管の構成タンパク質であるα-,β-tubulinの自然重合は抑制されており、何らかの微小管結合タンパク質が微小管重合開始を厳格に制御している。これまで、γ-tubulin複合体が中心体を形成することにより、その役割を果たすことが知られていたが、中心体とは関係なく重合する微小管も様々な細胞で見出され、その重要性が明らかになってきている。我々は今回、微小管マイナス端結合タンパク質であるCAMSAP2が、中心体非依存性の微小管重合を制御することを初めて明らかにした。CAMSAP2は、低濃度のα-,β-tubulinと共存することで、微小管の重合核形成を促進すること、また、その重合核が成長して星状体様の構造を形成することを明らかにした。さらにクライオ電子線トモグラフィーなどを用いた微細構造解析により、γ-tubulin複合体とは全く異なるCAMSAP2による微小管重合モデルを提唱した。CAMSAP2は、α-,β-tubulinと相互作用してα-,β-tubulinの縦方向の結合を促進し、縦に整列した繊維構造であるプロトフィラメントのリング形成を誘導する。これら中間体がさらにα-,β-tubulinの横方向の相互作用を誘起してシートを形成する。シートが微小管形成時の重合核となり、微小管重合へのエネルギー障壁を低くし、微小管伸長を促進する。この反応と並行してCAMSAP2を中心とした星状体様構造も形成される。反応が進むと、星状体様構造同士が微小管によりつながれた微小管ネットワークが形成される。微小管ネットワーク形成後、CAMSAP2は微小管の末端へと再配置され、微小管の末端を保護する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、CAMSAP2が微小管重合核形成を誘導する根本的な生理機能を有することを想定していなかった。しかし、精細な電子顕微鏡観察を繰り返すことにより、γ-tubulin複合体とは全く異なるCAMSAP2の微小管核形成能の分子機構を、世界に先駆けて発見することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
CAMSAP2の微小管重合核形成を誘導する詳細な分子機構を解明するため、微小管とCAMSAP2のクライオ電子顕微鏡を用いた高分解能構造解析を推進する。また、骨格筋および心筋細胞の成熟過程に見られるようなCAMSAP2と微小管安定化タンパク質であるMAP4を共存させた環境をin vitroで再構築し、その微小管ネットワーク形成機構をクライオ電子顕微鏡を用いて明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)