2019 Fiscal Year Annual Research Report
バソプレシン産生ニューロンを基軸とする中枢時計神経メカニズムの解明
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19H03399
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
三枝 理博 金沢大学, 医学系, 教授 (20296552)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 概日リズム / 視交叉上核 / 体内時計 / 睡眠 / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
視床下部の視交叉上核(SCN)の神経ネットワークは、概日(サーカディアン)リズムを制御する中枢時計として機能している。本研究では遺伝子改変マウスや神経生理学の最新の技術を用いて、中枢時計神経ネットワークの動作原理理解を目指す。現代社会では時差や夜間勤務、生活習慣の乱れにより、概日リズム変調は誰にでも起こりうる問題である。睡眠障害のみならず、気分障害、肥満、がん等、様々な疾患・健康障害 のリスクを増大する。したがって、概日リズム発振のメカニズムを理解し、概日リズム変調の効果的な予防方法・対処方法を見つけることは、大変重要である。 本年度は、GABAA受容体がSCNのAVPニューロンにおいて概日リズム発振に果たす役割を明らかにするための準備として、GABAA受容体各ベータサブタイプを in vivoゲノム編集によりAVPニューロン特異的にノックアウトするための組換えAAVベクターを作成した。また、AVPニューロン特異的Nalcn(Na+リークチャネル)欠損マウスを作製し、概日行動リズムに非常に興味深い異常が現れることを見出した。生体内でのSCNニューロンの活動パターンをニューロンタイプ毎に明らかにする目的で、ファイバーフォトメトリーと蛍光Ca2+センサーjGCaMP7sを用い、SCN ニューロンにおける[Ca2+]iリズムを、AVPニューロンやVIPニューロン特異的に長期間測定することに成功した。概日リズム異常を示すAVPニューロン特異的遺伝子改変マウスにも、ファイバーフォトメトリーによるin vivo計測を適用した。さらに、光遺伝学刺激により覚醒が亢進する新たなニューロン群を見出し、当該ニューロンの活動が概日リズムによる調節を受けることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ研究計画の通りに、研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
GABAA受容体がSCNのAVPニューロンにおいて概日リズム発振に果たす役割を明らかにするため、GABAA受容体各ベータサブタイプを in vivoゲノム編集によりAVPニューロン特異的にノックアウトしたマウスを作成し解析する。また、AVPニューロン特異的Nalcn(Na+リークチャネル)欠損マウスのSCNスライスのパッチクランプ解析を行い、Na+リーク電流の生理的意義を明らかにする。gain of function型の変異Nalcn を発現するマウスの概日リズムも調べる。ファイバーフォトメトリーを用い、正常およひ概日リズム異常遺伝子改変マウスにおいて、SCN のAVPニューロン 、VIPニューロンにおける[Ca2+]iリズムを、in vivoで測定し、行動リズム異常の神経基盤を明らかにする 。さらに、光遺伝学・化学遺伝学・ ファイバーフォトメトリーにより、新規に見出した覚醒促進ニューロンとSCNとの関係を検討し、中枢時計による睡眠調節の神経メカニズムの一端を明らかにする。
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Research Products
(8 results)