2019 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular Basis underlying morphogen gradient-mediated tissue homeostatic regulation
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19H03412
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石谷 太 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (40448428)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | モルフォゲン勾配 |
Outline of Annual Research Achievements |
モルフォゲン勾配は、組織を構成する各細胞に連続した位置情報を与え、場に適合した運命を誘導する機構であり、組織の構築・再生・維持に必須の役割を果たす。我々は最近、ゼブラフィッシュ初期胚で機能するモルフォゲン勾配であるWntシグナル勾配の研究を行う過程で、新たな生体防御システム「モルフォゲン勾配ノイズキャンセリング」を発見した。このシステムは、組織に突発的に生じたシグナル異常細胞をモルフォゲン勾配が与える位置情報を利用して感知・除去し、これによりモルフォゲン勾配の確実な形成と組織構築の正確な実行を支える。モルフォゲン勾配は初期胚だけでなく細胞ターンオーバーを行う成体組織でも機能することから、この新システムが成体組織においても機能し、恒常性維持や発がん抑制などに寄与すると期待できる。しかしながら、この現象はゼブラフィッシュ胚組織で発見したものであり、その生物種や組織種を超えた普遍性や、疾患との関連は未だ不明である。本研究では、このモルフォゲン勾配ノイズキャンセリングの生物種や組織種を超えた普遍性および生体防御における重要性を明らかにするともに、その分子基盤を解明する。 本年度はまず、ノイズキャンセリングの分子基盤を解明した。ゼブラフィッシュイメージングとオミクスを組みあわせた解析により、異常細胞が接着分子カドヘリンを介して隣接細胞に感知され、結果、異常細胞でSmadシグナル、ROSが活性化し、細胞死が誘導されることを解明した。また、この経路を人為的に破綻させた胚では、異常細胞が蓄積した。このようにノイズキャンセリングの分子基盤と生理機能の一端を解明した(Akieda et al., Nature Commun 2019)。 さらに、モルフォゲン勾配ノイズキャンセリングが、胚に生じたDNAダメージ細胞、エピゲノム異常細胞、shhシグナル異常細胞の除去にも関わることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モルフォゲン勾配ノイズキャンセリングの分子基盤と生理機能の一端を解明し、Nature Communication誌に論文を発表した。さらに、モルフォゲン勾配ノイズキャンセリングが、胚に生じたDNAダメージ細胞、エピゲノム異常細胞、shhシグナル異常細胞など多様な異常細胞の除去にも関わることを発見した。 これらの結果から、当初の計画通り順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、胚だけでなく、他の臓器においてもモルフォ勾配ノイズキャンセリングが作用するかを検証する。加えて、他のシグナル異常についても同様にノイズキャンセリングが作用するかを調べる。また、メカニズムの全貌解明も進めていく。 メカニズム解明と並行して、明らかになったメカニズム情報を基盤としてノイズキャンセリングの抑制実験を行い、その生理的・病理的意義を明らかにしていく。
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Research Products
(11 results)