2019 Fiscal Year Annual Research Report
細胞死の時空間伝播による生体損傷チェックポイントの分子基盤
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19H03419
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榎本 将人 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (00596174)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生体損傷 / 細胞死 / 組織間コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物を構成する組織・臓器は単独で機能しているわけでなく、互いに連携し合うことで個体の恒常性を維持している。しかしながら、生体恒常性システムを構築する組織・臓器間ネットワークの分子実体やその制御メカニズムは、いまだほとんど分かっていないのが現状である。本研究ではショウジョウバエ上皮をモデルとして、上皮に損傷が生じた際に駆動される細胞死の時空間伝播を介した新たな組織間ネットワークによる個体レベルの恒常性維持の分子基盤の解明を目指す。 ショウジョウバエ上皮である翅原基に物理的傷害を誘導すると、正常な上皮組織(複眼原基や肢原基)で細胞死が亢進することを見出した。この正常組織における細胞死をカスパーゼ阻害因子p35を過剰発現させることで遺伝学的に抑制すると、損傷組織の修復異常が生じた。すなわち、生体損傷に応答して引き起こされるシステミックな細胞が組織の修復再生を促すことを示唆している。そこで本年度は生体損傷に応答して生じるシステミックな細胞死の誘導因子の探索を実施した。ショウジョウバエ翅原基に物理的な傷害を誘導すると、損傷した翅原基において多数の死細胞が生じる。この損傷組織における細胞死のみを抑制すると正常組織の細胞死の亢進が抑制されることを見出した。このことは損傷組織に生じる死細胞が空間的に離れた正常組織の細胞死誘導に必要であり、生体損傷に応答して細胞死が空間的に伝播していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はシステミックな生体応答を解析するものであるが、解析過程で捉えた現象が各組織が自律的に起こしている現象・役割か、それとも組織間相互作用のアウトプットかを評価することに時間を要するため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は損傷組織の細胞死がどのようにシステミックな細胞死を誘発するか、また正常組織の細胞死がどのように生体損傷の修復に貢献するか、その分子メカニズムを遺伝学的解析により明らかにしていく。
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Research Products
(1 results)