2020 Fiscal Year Annual Research Report
低頻度バリアントに重点をおくアルツハイマー病の発症に関与する遺伝子の探索法開発
Project/Area Number |
19H03425
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
辻 省次 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (70150612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池内 健 新潟大学, 脳研究所, 教授 (20372469)
田中 真生 国際医療福祉大学, 医学部, 講師 (30774252)
石浦 浩之 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40632849)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / rare variants / association study |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,孤発性神経疾患の発症に関わる疾患感受性遺伝子を解明するために,これまでのゲノムワイド関連解析では検出が難しかった,疾患発症に対する影響度の高い遺伝子を探索するための,rare variant association studyとしての新たな解析方法の開発を実現する.その応用として,アルツハイマー病を対象とし,exome解析が完了している孤発性アルツハイマー病患者446例,認知機能正常な高齢健常者446例のゲノムデータを用いて,minor allele frequencyやその他の条件を検討することにより仮説空間を適切に減じ,孤発性アルツハイマー病に有意に関連すると判定される遺伝子を見出した.validationについては,孤発性アルツハイマー病患者400例,認知機能正常な高齢健常者400例を用いて,検討を進める.exome解析によるvalidation studyを検討しているが,候補遺伝子には,pseudogene が存在することから,exome解析で,pseudogene由来の配列情報をいかに区別できるかという点が課題となった.また,この候補遺伝子は,GC率の高い領域が多く含まれるため,exome解析において,いかにcoverageを高めるかが課題となった.そこで,2019年度においては,これらの2つの課題についての検討を行い,課題を克服できるexome解析の諸条件を確立した.また,2020年度には,これらの課題を克服できる最適化された条件により,実際にvalidation data setでのexome解析を開始し,想定された通りのクオリティの高いデータが得られていることを確認した.2021年度は,validation data set のexome解析を引き続き実施し,見出したリスク遺伝子のvalidation studyを実施する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
見出した遺伝子はGC率の高い領域を多く含むため,すでに実施した446例のデータにおいてcoverageが不十分な領域が少なからず認められることが判明した.さらに,相同性の高いpseudogene が存在する事が判明し,pseudogene 由来の塩基配列を区別した解析ができるかどうかについても検討が必要となった.GC率の高い領域でcoverageが不十分となる現象については,複数の異なるサンプル調整試薬を用いて作成したライブラリについてNovaSeqを用いて解析を実施し,得られたexomeデータの比較を実施した.その結果,サンプル調整試薬を変更することにより,GC率の高い領域におけるcoverageの低下をごくわずかにまで抑えることができることを確認した.また,pseudogeneの問題については,exome解析についてのさまざまなシミュレーション解析を行った.その結果,exome解析の場合のread lengthをこれまでの75bp x 2 paired-endから,100bp x 2 paired-endとread長を長く取ることにより,pseudogene 由来の配列を区別することができることを確認した.この条件で,実際にvalidation data setでのexome解析を開始し,実データでの検討により,標的遺伝子のコーディングエクソンに存在する全塩基について,genotype qualityおよびread depthが十分な値で保たれており,さらにpseudogene由来の配列情報を区別した想定通りの良好なデータが得られていることが確認できた.2021年度は,validation data set のexome解析を引き続き実施し,見出したリスク遺伝子のvalidation studyを実施する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の検討で,GC率の高い領域を多く含む遺伝子に対しても,ライブラリ作製に用いるサンプル調整試薬を最適化することにより十分なcoverageを得る事を確認した.また,75bp x 2 paired-endから,100bp x 2 paired-endとread長を長くすることにより,pseudogene由来の配列を区別できることができた.これらの成果に基づき,2020年度より,最適化されたサンプル調整試薬を使用した100bp x 2 paired-endのexome解析条件に基づき,孤発性アルツハイマー病患者400例,認知機能正常な高齢健常者400例を用いたexome解析を開始し,得られた実データにおいても,想定された通りのクオリティの高いデータが得られていることを確認した.2021年度もexome解析を引き続き実施し,既に見出している候補遺伝子がアルツハイマー病発症リスクとなっているかどうかを検証するためのrare variant association studyを進める.
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