2020 Fiscal Year Annual Research Report
新規マウスモデルを用いた細胞老化制御機構の解明による『老い』の分子基盤の構築
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19H03431
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
城村 由和 東京大学, 医科学研究所, 助教 (40616322)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 細胞周期 / 一細胞解析 / 生活習慣病 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞老化は個体老化・加齢性疾病の発症・進展に深く関与することが知られている。生体内における細胞老化の役割を解明するために、2019年度、本研究を実施するにあたり重要なツールとなる、世界で初めて老化細胞を個体で同定・単離・トレースを可能にした『p16-tdTomatoマウス』の樹立に成功した。さらに、正常・非アルコール性脂肪肝炎を誘導した肝臓における一細胞RNA-seq解析を行った結果、病態に応じて様々な細胞種が老化細胞になることが分かった。 2020年度は、前年度に引き続き、一細胞RNA-seq解析データを基に詳細な遺伝子発現解析を行った。その結果、正常肝臓でもっとも老化細胞の割合が多かった肝類洞壁内皮細胞では、細胞老化に伴いタンパク質の品質管理に関わる機能が低下することが示唆された。また、次に老化細胞の割合が多かったクッパ―細胞では、細胞老化に伴い免疫機能の低下とともに、肝類洞壁内皮細胞様に遺伝子発現パターンを示すことが明らかになり、細胞の同一性の喪失が生じていることが示唆された。一方、非アルコール性脂肪肝炎を誘導した肝臓においては、正常肝臓で認められた肝類洞壁内皮細胞やクッパ―細胞の変化に加えて、多くの免疫細胞で老化細胞が認められることが分かった。特にマクロファージ細胞では、培養細胞を用いた解析で報告されているように、炎症機能の増強が認められることが分かった。 以上の結果から、少なくとも肝臓においては、生体内における老化細胞は細胞種や病態によって大きく性質が異なることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定通り、生体内における老化細胞可視化マウスの樹立に成功し、一細胞解析に応用することが可能であることを示すことができた。さらに、その解析から、生体内における老化細胞の性質は細胞種・病態ごとに大きくその性質が異なることを世界で初めて明確に示すことができた。さらにその研究成果に関して、有力な米国の医科学雑誌に発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の解析に用いた正常肝臓は比較的若齢期のマウスより採取したものである。今後は、老齢マウスより採取した肝臓を用いて同様の解析を進める必要がある。また、肝臓以外の臓器についても解析を進めていく必要がある。
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Research Products
(4 results)