2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of novel functions of VCP, a major ATPase in the cell
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19H03435
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
垣塚 彰 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (80204329)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | p97/VCP / 新規機能 / 細胞保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、可溶性ATPaseの中で最も豊富に存在するVCPが果たす細胞・生体での新たな機能の解明を目的とする。また、我々が独自に開発したVCPの ATPase活性を特異的に阻害する化合物KUS(Kyoto University Substance)を用いて疾患モデルへの介入実験を行うことを目的とし、本年度は、以下の結果を得た。 1) VCPがアミノ酸センサーとして働く可能性の解析:前立腺癌由来のPC-3細胞株では、飢餓時にVCPが細胞内で凝集体様の構造をとる。そこで、飢餓培地に糖、脂質、アミノ酸をそれぞれ戻した培地を作成し、それぞれでPC-3細胞を培養し、24時間後にVCPの細胞内の局在を免疫染色で確認し、VCPの凝集体がアミノ酸の欠乏によって引き起こされることを明らかにした。さらに、グルタミンの単独欠乏時にVCPの凝集体が形成されること、全アミノ酸を除いた培地にグルタミンのみを加えた時に、VCPの凝集体が消失することを明らかにした。 2) アミノ酸飢餓時にVCPが引き起こす細胞内凝集体の意義の解析: アミノ酸飢餓時にVCPが引き起こす細胞内凝集は、細胞にとって保護的に働くのか障害的に働くのかを明らかにするため、その時のメカニスズムを検証した。結果、アミノ酸飢餓時にグルタミンのみを添加するとVCPの細胞内凝集体が消失するのと同時に急激な細胞死がおこることを見いだした。これは、アミノ酸飢餓時にVCPが凝集体化することで、細胞内でのフリーなVCP蛋白質の量が減り、細胞死の誘導を防いでいる可能性を示唆している。 3) KUSには、アトピー性皮膚炎のモデルマウスの症状を劇的に改善する活性があることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞内の主要なATPaseであるVCPの新たな機能として、VCPがアミノ酸欠乏時に細胞内で凝集体様の構造体を形成し、細胞を細胞死から保護する役割を担っている可能性を見いだした。この時VCPが感知しているのは、グルタミンもしくはその代謝産物であると考えられた。また、我々が独自に開発したVCPのATPaseの特異的な阻害剤KUSが、アトピー性皮膚炎のマウスモデルの症状を劇的に緩和する作用を持つことが判明し、KUSがアトピー性皮膚炎に対する新たな治療薬になる可能性を見いだした。以上のように、本研究で、計画したほぼ全ての実験を行ったことから、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度の実験結果を踏まえ、平成2年度は、 1)シスチンの代謝産物の減少が細胞死を誘導していると仮定して、グルタミンのみの添加によって減少するシスチンの代謝産物を生化学的に同定する。また、シスチンは、抗酸化作用があることが知られているので、グルタミンのみの添加によってROSの誘導が起こっている可能性、また、そのROSの誘導がシスチンの添加によって抑制されることを検証する。 2)アミノ酸飢餓時にVCPの凝集によって阻害される細胞死に対し、詳細な分子メカニズムの解析を行う。具体的には、アポトーシスやネクロプトーシス,フェロトーシス、パイロトーシスなどのマーカーとそれらの特異的な阻害剤による検証を行い、本細胞死と既知の細胞死の異同の検証を行う。さらに、本細胞死がROSによる細胞死であることが判明した場合、ROS産生のメカニズムとROSが本細胞死を誘導するメカニズムに対し、幾つかの可能性を考え、その検証を行う。 3)アトピー性皮膚炎のモデルマウスに対するKUSの治療効果に関し、より詳細に解析を行う。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Safety and effectiveness of a novel neuroprotectant, KUS121, in patients with non-arteritic central retinal artery occlusion: An open-label, non-randomized, first-in-humans, phase 1/2 trial.2020
Author(s)
Ikeda HO, Muraoka Y, Hata M, Sumi E, Ikeda T, Nakagawa T, Abe H, Tada H, Morita S, Kakizuka A, Yoshimura N, Tsujikawa A.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 15
Pages: e0229068
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Genetic screening for potassium channel mutations in Japanese autosomal dominant spinocerebellar ataxia.2020
Author(s)
Tada Y, Kume K, Matsuda Y, Kurashige T, Kanaya Y, Ohsawa R, Morino H, Tabu H, Kaneko S, Suenaga T, Kakizuka A, Kawakami H.
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Journal Title
J Hum Genet.
Volume: 65
Pages: 363-369
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Cardioprotective Effects of VCP Modulator KUS121 in Murine and Porcine Models of Myocardial Infarction.2019
Author(s)
Ide Y, Horie T, Saito N, Watanabe S, Otani C, Miyasaka Y, Kuwabara Y, Nishino T, Nakao T, Nishiga M, Nishi H, Nakashima Y, Nakazeki F, Koyama S, Kimura M, Tsuji S, Rodriguez RR, Xu S, Yamasaki T, Watanabe T, Yamamoto M, Yanagita M, Kimura T, Kakizuka A, Ono K.
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Journal Title
JACC Basic Transl Sci.
Volume: 4
Pages: 701-714.
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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