2020 Fiscal Year Annual Research Report
自己免疫/自己炎症性疾患における内在性レトロトランスポゾン活性化の意義の解明
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19H03451
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴田 琢磨 東京大学, 医科学研究所, 助教 (30554505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 貴世志 東京大学, 医科学研究所, 講師 (50466843)
竹本 経緯子 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (90243104)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TLR7 / トランスポゾン / 自己炎症性疾患 / 自己免疫疾患 / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞小器官であるエンドソームに分布するTLR7はウイルス由来一本鎖RNA(ssRNA)を認識し、抗ウイルス応答を誘導する。一方、TLR7の過剰活性化は自己免疫疾患や自己炎症性疾患の発症にも関与する。しかし、感染と関連がないこれら病態においてTLR7が過剰活性化する理由は全く不明である。我々は最近、ssRNAによるTLR7の活性化にRNA分解産物であるオリゴリボヌクレオチド(ORN)とグアノシン(G)の両者が必須であることを発見し、マクロファージがGを過剰に蓄積することでTLR7依存的な自己炎症性疾患が引き起こされることを見出した。しかし、構造生物学的知見から、エンドリソソームにおけるGの蓄積だけではTLR7活性化は誘導されないと考えられ、TLR7の過剰活性化には感染以外のORN供給源が関与するはずである。 これまでの解析結果から、Gを過剰にマクロファージでは5-AzaCなどの試薬処理に伴う内在性レトロトランスポゾンの発現量が上昇することでTLR7依存的なサイトカイン産生が誘導可能されることが判明している。同マクロファージでは特定の内在性レトロトランスポゾンの発現が特異的に上昇することから一部の内在性レトロトランスポゾンがTLR7を活性化すると考えられる。また、生体内におけるマクロファージのTLR7活性化はサイトカイン産生よりも細胞増殖を優先的に誘導することも判明してきた。 以上の結果を踏まえ、今後は生体内においてレトロトランスポゾンのTLR7活性化が自己炎症性疾患や自己免疫疾患の病態にどの様な影響を与えるのかを検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レトロトランスポゾンがTLR7を介した免疫応答に影響を与えることを示す為、昨年度は以下に示す2つの項目に着目して検証を行った。 ① レトロトランスポゾンの発現がTLR7を活性化することの証明:5-Azacytidine(5-AzaC)はDNAメチル基転移酵素阻害剤であり、DNAのメチル化を阻害することで普段は抑制されているレトロトランスポゾンの発現を促す。ヌクレオシドトランスポーターであるSLC29A3の欠損マクロファージではリソソームにGが過剰に蓄積するが、同細胞を5-AzaCで処理したところTLR7依存的なサイトカイン産生が誘導された。この結果より、細胞質で発現したレトロトランスポゾンはエンドリソソームに分布するTLR7により認識されると考えられる。 ② 自己免疫/自己炎症性疾患におけるレトロトランスポゾンの意義の検証:エンドリソソーム内にGが蓄積するSLC29A3の欠損マウスを作製して解析を行った。同マウスではTLR7依存的に生体内におけるマクロファージの増殖(ヒスチオサイトーシス)が引き起こされ、in vitroとは異なりサイトカイン産生はほとんど誘導されなかった。同メカニズムを解明する為、本年度はin vitroにおいてTLR7依存的細胞増殖の再現を試みた。その結果、TLR7はCo-Receptorと協働することで細胞株の増殖を誘導することが判明した。今後、同実験系を用いてTLR7依存的な細胞増殖に及ぼすレトロトランスポゾンの役割を検証していく。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は以下に記す3項目に関して検証を行う。 ① レトロトランスポゾンが TLR7を活性化することの証明:これまでの解析結果から、内因性レトロトランスポゾンの発現を上昇させる効果のある5-AzaCなどの刺激により、マクロファージ細胞株ではTLR7の活性化に伴うサイトカイン産生が誘導されることが判明している。一方、TLR7依存的に自己免疫疾患や自己炎症性疾患が誘発されるマウスモデルの生体内ではサイトカイン産生よりも細胞の増殖・生存が優先的に誘導されることが判明してきた。本年度は、前年度に樹立したTLR7依存的な細胞増殖の系を用いてレトロトランスポゾンが細胞増殖において果たす役割を検証する。 ② TLR7を活性化するレトロトランスポゾンの種類の検証:内在性レトロトランスポゾンはレトロウイルス、LINE、SINEの3種類に大きく分類される。これまでの解析より、細胞株レベルでは5-AzaC刺激により特定のレトロトランスポゾンの発現が上昇することが判明している。昨年度の解析から自己炎症性疾患モデルマウスの生体内ではマクロファージがTLR7依存的に増殖することが判明してきており、本年度は同マウスモデルのマクロファージおいてどの様なレトロトランスポゾンが発現するのかをRNAseq解析により検証し、生体内のTLR7過剰活性化に関与するレトロトランスポゾンの種類の同定を目指す。 ③ 自己免疫/自己炎症性疾患におけるレトロトランスポゾンの意義の検証:マクロファージがTLR7依存的に活性化することで自己免疫および自己炎症性疾患が誘発されるモデルマウスを用い、レトロトランスポゾン発現を抑制する遺伝子群の意義を検証する。具体的には、hCAS9を発現する骨髄細胞に様々なレトロトランスポゾン関連遺伝子をターゲットとするsgRNAを発現させた後に骨髄移植を行い、誘導される病態がどの様に変化するのかを解析する。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] The impact of cell maturation and tissue microenvironments on the expression of endosomal Toll-like receptors in monocytes and macrophages2020
Author(s)
Ryota Sato, Tatjana Reuter, Ryosuke Hiranuma, Takuma Shibata, Ryutaro Fukui, Yuji Motoi, Yusuke Murakami, Hiroki Tsukamoto, Satoshi Yamazaki, Kaiwen Liu, Shin-Ichiroh Saitoh, Eicke Latz, Kensuke Miyake
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Journal Title
International Immunology
Volume: 32
Pages: 785-798
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Structural analysis reveals TLR7 dynamics underlying antagonism2020
Author(s)
Shingo Tojo , Zhikuan Zhang, Hiroyuki Matsui, Masahiro Tahara, Mitsunori Ikeguchi, Mami Kochi, Mami Kamada, Hideki Shigematsu, Akihisa Tsutsumi, Naruhiko Adachi, Takuma Shibata, Masaki Yamamoto, Masahide Kikkawa, Toshiya Senda, Yoshiaki Isobe, Umeharu Ohto, Toshiyuki Shimizu
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 11
Pages: 5204
DOI
Peer Reviewed / Open Access