2019 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子量バランスの崩壊とヒト疾患発症メカニズムに関する解析
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19H03457
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田村 勝 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, チームリーダー (50370119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綾部 信哉 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 専任研究員 (10633563)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 疾患モデルマウス / 染色体異常 / トリソミー / 4番染色体 / 4q |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の体が正常に発生・機能する為には、決められた量の遺伝子が発現する必要がある。その破綻は疾患につながる。遺伝子量に注目すると染色体異常疾患のモノソミーやトリソミーがその例となる。このモノソミーやトリソミーは、遺伝子の量的過剰、もしくは不足が原因で 症状が出現すると漠然と考えられているが、その実態の多くは不明である。時にハプロ不全 が原因であるとされている疾患モデルに他の変異を導入することにより、その表現型が消失 する事例が存在する。この事は、単なる遺伝子の量的過剰や不足が症状発症の原因ではない事を意味している。本申請研究課題は、ヒト疾患・4番染色体長腕部分重複症をモデルに、染色体異常疾患の表現型発症の本質を見いだすことを目的とする。具体的には、複数遺伝子間の量的バランスの崩壊が染色体異常疾患症状の原因であることを立証する。4q+における骨形体異常原因遺伝子を同定、その機能を明らかにし、頭骨低形成メカニズムを解明する。 解析1年目である本年度は、これまでに我々が4q+モデル動物を用いて明らかにしてきた候補遺伝子群の内、Hand2とHmgB2遺伝子、またこれら遺伝子と相互作用することが考えられるRunx2遺伝子に関して遺伝子改変動物を中心に解析を進めた。また、遺伝子発現領域の解析や新たな遺伝子改変マウスの作製など基礎データ収集と今後に向けた実験ツールの開発、新規モデル動物開発に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4q+モデルマウスであるRim4は頭蓋縫合融合不全や 鎖骨低形成の表現型を示す。研究初年である本年度は、このRim4の遺伝的背景であるC57BL/10の準備などで大規模生産に手間取った。しかしその後は順調にRim4:HmgB2ダブル変異体の作製などを行うことができた。また、HmgB2:Runx2ダブル変異体の作製なども計画通りに順調に進めた。更にIVFなどを駆使してトリプル変異体の作製にも着手することができ、一部の個体に関して表現型解析を開始している。遺伝子発現解析に関しては、骨形成時に遺伝子発現が非常に低い遺伝子があると思われ、現在増感in situ hybridization法などにより解析を継続している。研究初年度はこのように順調に進めることができたが、新型コロナウィルスによる非常事態宣言が出された後は、厳しい状態にある。研究代表者、分担者の所属機関でも一斉在宅勤務が命じられ、また飼育マウスもバックアップのないマウス系統の維持のみに限定、それ以外の系統は一旦凍結胚を作製し保存することになった。本研究で使用するマウス系統に関しても多くが凍結保存をせざるを得ない状態になった。本研究課題では幸い骨解析が中心となる為、淘汰する場合でもダブル変異体などはサンプリングを行ったりそのまま冷凍保存することによりサンプル確保ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現などの基本解析はこのまま進める。また研究1年目で作製・サンプリングを行ったダブル、トリプル変異体に関しては単純X線CTや造影X線CTを用いたイメージング解析を進めて、研究のスピードアップを図る。マウスを用いた実験に関しては系統の復元から進める必要がある。この点に関してはIVFや過排卵法など発生工学的手法を駆使して迅速にマウス系統の復元を行う。更に1年目のダブル、トリプル変異体の予備的な解析からマウス系統の復元と並行して新たな遺伝子改変マウスの作製行うことを計画している。今年度からはAAVウィルスとCRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子改変動物作製が所属研究所の遺伝子組み換え審査に通っているので、よりスピーディーに作製が行えるものと考えられる。また、時にはダブルヘテロノックアウトマウス系統の作製にもシングルヘテロマウス同士の交配による作製からCRISPR/Cas9システムを利用したダイレクトダブル変異体作製に切り替えることも計画している。新型コロナウィルスの流行により余儀なくされた研究中断を発生工学的手法やゲノム編集、高速イメージング解析法を駆使して一刻も早く計画通り、もしくは研究計画以上のスピード感を持って染色体異常疾患発症の本質を明らかにしたい。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Pathogenic POGZ mutation causes impaired cortical development and reversible autism-like phenotypes.2020
Author(s)
Matsumura K., Seiriki K., Okada S., Nagase M., Ayabe S., Yamada I ., Yamamoto K., Kitagawa K., .. Tamura M., ....,and Nakazawa T.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 11
Pages: 859
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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