2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H03483
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
澤 新一郎 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (80611756)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | LTi細胞 / RORgt / FDC / MRC / マウスモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
①MRC-FDC間の細胞系譜関係の検証 濾胞樹状細胞(FDC)は高親和性B細胞の発生に重要な役割を担う。本研究ではFDCがリンパ節辺縁部に存在するMRCから分化成熟するとの仮説を検証するため、Tnfsf11ttA/+;LC1; Rosa26-tdTomatoマウスを作出し、RANKLを発現するリンパ節MRCを蛍光タンパク質tdTomato で時期特異的に標識することに成功した。本マウスを妊娠中の母親マウスにdoxを投与しておき、妊娠19日目以降dox投与を中止し、4週齢マウスの腸管膜リンパ節を組織学的に検証したところ、MRCからB細胞領域内へと連続的に標識される線維芽細胞の集団を確認することができた。 ② LTi細胞がFDC分化に与える影響の検証 胎仔リンパ節形成に重要なLTi細胞はリンパ節原基において線維芽細胞へのLTα1β2シグナルを供給することで線維芽細胞の分化と成熟を誘導すると考えられている。本研究ではFDC分化に与えるLTi細胞の役割を理解するため、LTi細胞のみを時期特異的に欠失可能なマウスモデルの作出を試みた。まず、LTi細胞分化のマスター制御因子RORγtのプロモーター下流にジフテリア毒素受容体を発現させたマウス(RORγt-iDTR)を作出し、ジフテリア毒素(DT)投与によるLTi 欠失効率を検討したが致死量以下のDT投与では1週間後の細胞除去率が30%にとどまり、RORγt-iDTRマウスは不適格マウスと結論づけた。一方、LTi細胞特異的なRORgt遺伝子エンハンサー領域(Rorc-peak1)の同定に成功した。 Rorc-Peak1をホモ欠損する(KO)マウスはLTi細胞数が激減し、リンパ節は、B細胞領域の形成が障害されていた。以上の結果から、LTi細胞は成体のB細胞領域の形成、維持に重要な役割を担うこと結論づけた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FDCとMRCの細胞系譜関係の証明に必要なマウスモデルの作出に成功し、仮説の評価系を樹立することができた。しかし、MRCじゃらFDCへの分化を確認できたのは4週齢マウスの腸管膜リンパ節のみであるため、今後様々な時期の全身リンパ節における組織学的評価を積み重ね、本現象が腸管膜以外のすべてのリンパ節で生じる現象でらうことを証明する。 一方、本研究計画の段階からLTi細胞のみを除去可能なRORγt-iDTRマウスを樹立し、MRCからFDCへの分化を担う責任細胞の同定を試みてきたが、RORγt-iDTRマウスモデルでは期待された細胞除去効率を得ることができず、ツールの変更を余儀なくされた。幸運なことに、別プロジェクトで同定したRORgt遺伝子エンハンサー領域をホモ欠損させたマウスではLTi細胞の欠失とB細胞領域の形成障害の表現型が見られ、LTi細胞によるFDC分化成熟を強く示唆するデータを得ることができた。以上から、実験遂行は概ね順調と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
RORgt-Peak1欠損マウスにおけるB細胞領域形成障害の理由として、LTi細胞上のLTa1b2の低下がによるFDCの分化成熟障害が考えられる。来年度は(1)Rorc-peak1領域の両端にloxp配列を有するRorc-peak1 flox/floxマウスを作出後、タモキシフェン誘導性にCreを発現するRosa260ERT2Creマウスと交配し、Rorc-peak1を時期特異的に欠失可能なマウスモデルを作出する。(2) LTa1b2の受容体であるLTbRのexon5,6の両端にloxP配列を有するLTbR flox/floxマウスとRosa260ERT2Creマウスと交配し、LTbRを時期特異的に欠失可能なマウスモデルを作出する。(1),(2)マウスにおけるFDCおよびB細胞領域の形成を組織学的に評価し、MRCからFDCへの分化メカニズムを細胞レベル、分子レベルで解明する。
|