2020 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism of LILRB4-mediated immune checkpoint
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19H03484
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高井 俊行 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (20187917)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 免疫制御 / 自己免疫 / がん免疫 / 細胞外マトリックス / がん転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の核心的な問いは「T細胞の免疫チェックポイントとは独立に機能する,B細胞,ミエロイド系(B/My)細胞にも備わる新しいチェックポイントを同定し,それを修飾することでがんと自己免疫の双方を一括して制御することは可能か?」である。これの答えを見出すため,T細胞を中心に理解されている免疫チェックポイントが,実はB/My細胞にも備わっている多階層的なシステムであり,とりわけ研究代表者らが20年に亘り取り組んでいるLILR(リラ)B分子群のうちB4が少なくともその一部として重要な機能を担う,という仮説を立てた。 代表者らは自己抗体を高産生するSLE病原性プラズマセル(PC)特異的に発現変化するLILRB4(B4)が未治療SLE患者PCに高発現することを見出した(PCT出願)。SLEでは生理的リガンド不足等のためにB4の本来の抑制機能が不全になっていると考えた。そこでB4の生理的リガンドを同定し,これらのアゴニスティック活性をin vitroで,in vivoで評価することでB4の抑制機能を賦活するメソッドを開発した(PCT出願)。そしてB4の生理的リガンドB4L1を発現する細胞を同定し,さらにその分子的実体をLC-MS/MS解析により同定した。さらにB4結合ドメインを決定した。マウスSLEモデルにおいてこのリガンドFc融合タンパク質およびB4阻害抗体の投与,B4欠損SLEモデルマウスにおける病態の解析を進め,とりわけSLEモデルマウスでB4が欠損することで病原性自己抗体産生細胞数が減少し,糸球体腎炎が緩和されることを見出した(PCT出願)。さらに担がんモデルマウスに抗B4抗体などを投与することで,がんの転移,増殖が抑えられ,またB4欠損マウスでは特にがん転移が強く抑制されていることが見出された(PCT出願)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
創薬に向けた研究としてB4細胞障害型抗体,B4L1阻害抗体を独自に開発し,in vitro, in vivoでの有効性を評価の上,改変型抗体の種類によって疾患モデルで有効な例,無効な例を抽出することに成功した。また,ヒト型化抗体の開発に向け,抗B4抗体を独自に開発し,特徴を調査している段階である。さらに臨床検体由来の組織標本でこれら抗体の有用性を組織化学的に評価し,予備実験の結果では,がんの予後予測に有用である成果を得た。また,B4-B4L1の複合体の三次元構造解析を進めており,結晶化の段階まで進んでいる。これらは当初の見込みを上回る進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
がんと自己免疫疾患マウスモデル実験系でB4抗体,B4L1抗体,B4L1ペプチドの投与により治療効果を評価してB4-B4L1軸の免疫チェックポイントの治療標的としての有効性を明確化する。 担がんマウスにおけるB4-B4L1の修飾効果の評価としてCD8+ T細胞,ミエロイド由来サプレッサー細胞(MDSC),寛容誘導性樹状細胞(DCreg),Tregを標的に,これらのB4-B4L1システムを抗体により阻害し抗がん免疫を増強する。この目的のためにLewis lung carcinoma(LLC)およびB16F10 melanoma(B16F10)を接種された担がんマウスにB4抗体を投与,またはB4L1抗体の投与を複数回行い,2週目のCD8+ T細胞の活性状態をin vitroサイトカイン産生量の測定,表面マーカー分子のFCM解析で評価するほか,LLC,B16F10の腫瘍径,腫瘍内部の血管新生,他組織への転移状態などを病理組織学的,免疫化学的に測定して,抗がん免疫の賦活効果を評価する。 自己免疫モデルにおけるB4-B4L1の修飾効果の評価としては,B4highプラズマセルが自己抗体を高産生することに加え,研究代表者らは,BXSBマウスへのB4抗体の投与により血中自己抗体価の増加が抑制される予備実験の結果を既に得て,この原因が抗体のIgGへのクラススイッチが抑制されることに起因するデータを得た。これをin vitroでのB細胞の活性化実験系に落とし込んでB4とB4L1の効果として抽出する試みを開始する。 これらに加え,B4-B4L1複合体の三次元構造解析を開始し,チェックポイントの分子機構の解明に有用なデータを得る。
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Research Products
(2 results)