2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study of mRNA translation in immune system
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19H03488
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三野 享史 京都大学, 医学研究科, 助教 (60646149)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自然免疫 / サイトカイン / 転写後制御 / 翻訳 / mRNA分解 / Regnase-1 / UPF1 / リボソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,免疫システムにおけるmRNAの翻訳制御機構の解明を目的としている。本年度は,主にRNA分解酵素Regnase-1を介したmRNA翻訳制御機構に関して研究を進めた。これまでの研究より,Regnase-1は翻訳が生じているmRNAの分解を誘導することが分かっているが,翻訳は大きく分けて2つのクラスに分類されることが知られている。1つは,翻訳の初期段階であるパイオニアラウンド翻訳と呼ばれるもので,mRNAの5'-cap構造にcap結合蛋白質CBP80が結合したmRNAから生じる。もう一つは,ステディーステート翻訳と呼ばれるもので,CBP80が別のcap結合蛋白質eIF4Eに置換されて,mRNAの5'-cap構造にeIF4Eが結合したmRNAから生じる。RNA免疫沈降法によりRegnase-1がCBP80とeIF4Eのどちらが結合したmRNAと結合しているのかを検討した結果,Regnase-1はCBP80と結合したmRNAと結合していた。更に,RNA免疫沈降シーケンスにより,Regnase-1欠損細胞において,CBP80が結合したRegnase-1標的mRNAが増加していた。つまり,Regnase-1はパイオニアラウンド翻訳においてmRNAの分解を生じていることが分かった。更に,このRegnase-1によるパイオニアラウンド翻訳状態のmRNA分解が蛋白質の生成量に与える影響を数理モデルにより検討した結果,Regnase-1がパイオニアラウンド翻訳状態のmRNA分解することで,1分子のmRNAから生成される蛋白質の量を低く制限していること分かった。すなわち,本研究により,Regnase-1による翻訳初期段階のパイオニアラウンド翻訳のmRNA分解が,迅速に炎症性mRNAの翻訳状態を解消し,素早くそして効率的に炎症の終結を誘導していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,研究計画通り,主にRegnase-1を介した炎症性サイトカインmRNAの翻訳制御メカニズムについて研究を進めた。そして,Regnase-1が翻訳初期段階のパイオニアラウンド翻訳を生じるmRNAと結合し,パイオニアラウンド翻訳状態のmRNA分解することで,迅速に炎症性mRNAの翻訳状態を解消し,素早くそして効率的に炎症の終結を誘導していることが明らかとなった。このRegnase-1によるmRNA分解を介した素早い翻訳阻害が,1分子のmRNAから生成される炎症性サイトカインなどの蛋白質の発現量を低く制限することで,免疫を厳密に制御していることを解明した。 更に,Regnase-1による炎症性サイトカインmRNAの分解機構を検討した結果,RNAヘリカーゼUPF1が標的mRNA上に存在するステムループRNAの構造をほどくことで,Regnase-1による炎症性サイトカインのmRNA切断が開始されることを解明した。更に,SMG1と呼ばれるキナーゼによるUPF1のリン酸化がRegnase-1とUPF1の安定的な相互作用およびRegnase-1によるRNA分解に必要であることを明らかにした。加えて,SMG1のキナーゼ活性を阻害剤で抑制することで,樹状細胞の成熟を促進し,T細胞活性化能を亢進させることも見出した。炎症性サイトカインmRNAの新たな分解メカニズムを解明した。本研究の成果は,過剰もしくは慢性的な炎症で生じる炎症性疾患の病態解明や,ワクチンの効果を高める添加剤(ワクチンアジュバント)の開発など,新たな治療法の開発につながることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな免疫システムにおけるmRNAの翻訳制御機構を解明するために,これまでの研究で免疫のRNA制御に関わることが知られているRNA結合蛋白質(Regnase-1, UPF1, Roquin, TTPなど)と相互作用する蛋白質を近接依存性ビオチン標識法であるBio-ID法により同定する。そして,同定された新規制御因子をノックアウトあるいはノックダウンして,免疫関連mRNAの分解および翻訳にどのように関わるかを検討する。 更に,本年度の研究成果より,UPF1によるRNA構造変化がRegnase-1によるRNA切断のスイッチとなっていることが明らかとなった。これは,RNAの構造変化がサイトカインmRNAの分解および翻訳の制御に重要であることを示唆している。そこで,免疫応答における免疫関連mRNAの構造変化を解析して,免疫制御におけるRNA構造変化の重要を検討する。
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Research Products
(6 results)