2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Targeting therapy for centrosome dysregulation in cancer
Project/Area Number |
19H03493
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 奈津子 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (50361192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉野 優樹 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60755700)
大塚 慧 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (20772437)
城田 松之 東北大学, 医学系研究科, 講師 (00549462)
渡部 剛 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (70451573)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中心体 / がん関連分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
中心体は微小管形成中心として機能し、分裂期には紡錘体極として娘細胞への均等な染色体分配を担う。中心体の数や構造の異常は染色体分配に異常を来たし、発がんの原因になる。一方、中心体の異常は正常細胞にはない明らかながんの特徴で、がんの診断や治療の標的として有望である。遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因遺伝子産物であるBreast Cancer 1 (BRCA1)は、従来DNA修復能が注目されてきたが、我々はBRCA1結合分子Obg-like ATPase 1 (OLA1)やReceptor for activated C kinase (RACK1)を同定し、これらがBRCA1とその結合分子であるBARD1とともに中心体複製を制御し、それらの機能破綻が中心体数を増加させ、発がん機構に関与することを明らかにしてきた。 本研究で、BRCA1とこれらの関連分子による中心体制御機構をさらに詳細に解析した結果、RACK1が中心体複製を制御するAurora AとPLK1と直接結合し、Aurora A によるPLK1のリン酸化による活性化を促進し、中心体の複製に関与することが明らかになった。また、BRCA1とBARD1が中心小体の伸張因子の発現量を制御し、がんで高発現するBARD1の1つの isoformの高発現が中心小体の過剰伸長を起こすことが明らかになった。また、BRCA1の中心体局在の制御機構については、脱リン酸化の重要性が明らかになった。さらにAurora AがG2期のOLA1の中心体での局在量を制御し、それにより細胞周期のG2期の中心体成熟を制御することも明らかになった。中心体のDNA損傷応答については、ATMによるBRCA1のリン酸化が重要で、BRCA1が核から中心体へのシグナル伝達を担い、Aurora Aの中心体局在を制御することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Aurora AによるPLK1のリン酸化による活性化は、これまで細胞周期のG2期の中心体成熟やM期においての促進因子が明らかになっていたが、本研究により、RACK1がS期でのAurora AによるPLK1のリン酸化を促進して中心体複製を制御することが明らかになり、この制御機構の異常が乳がんの発がんに関与することが示唆された。また、BRCA1とBARD1が、ヘテロダイマーを形成して発揮するユビキチン化能で中心小体の伸張因子の発現量を制御し、ユビキチン化能を持たないがんで高発現するBARD1の一つの isoformの高発現が中心小体の伸張因子を安定化させ、中心小体の過剰伸長を起こすことが明らかになった。また、BRCA1の中心体局在の制御機構について、BRCA1の脱リン酸化の重要性が明らかになった。さらにAurora AがG2期のOLA1の中心体での局在量を制御し、それにより細胞周期のG2期の中心小体周辺物質の中心体局材料を制御して、中心体成熟を制御することも明らかになり、さらにこの機構の異常が中心体数の異常を引き起こし、発がんを促進することが示唆された。また、中心体のDNA損傷応答については、抗がん剤であるCDDP処理後のATMによるBRCA1のリン酸化が重要で、BRCA1が核から中心体へのシグナル伝達を担い、Aurora Aの中心体局在を制御することで。中心体数の増加を引き起こすことが明らかになり、BRCA1の家族性乳がん由来の変異により、CDDP処理後のAurora Aの中心体局在が減弱することが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
BRCA1とその関連分子による中心体制御機構について、がんで高発現するBARD1の一つの isoformの高発現が、中心小体の過剰伸長を起こすことが明らかになったため、他のisoform の影響について解析する。また、BRCA1、BARD1が中心小体の伸張を制御する因子をユビキチン化して、中心体伸張に関与することが示唆されたため、このメカニズムについてさらに解析する。Aurora AがG2期のOLA1の中心体での局在量を制御し、それにより細胞周期のG2期の中心体成熟を制御することが示唆されたため、中心体成熟に重要な分子の制御について解析する。 BRCA1とその関連分子の異常による組織特異的な発がん機構について、Ola1ノックアウトマウスの腫瘍形成へのエストロゲン処理の影響を解析する。さらに、乳腺特異的Ola1 KOマウスの乳腺における腫瘍形成とトリプルネガティブ乳がんとの関連、その細胞分裂や中心体の異常、エストロゲン処理の影響の有無を観察する。また、中心小体のマーカーとなるGFP-centrinを安定発現する乳がんや他組織由来細胞株をタイムラプス観察し、中心小体の複製過程を解析し、エストロゲン刺激の中心体複製への影響も解析する。 中心体のDNA損傷応答機構については、DNA損傷後の中心体数増加におけるBRCA1の機能が明らかになったたため、さらにOLA1やRACK1などの関連分子の機能についてさらに解析する。また、DNA傷害性薬剤とクラスタリング阻害薬AZ82処理による中心体増加、多極紡錘体形成、殺細胞効果における中心体マーカーの免疫染色での中心体数の異常、BRCA1やその関連因子のバイオマーカーとしての有用性をマウスの移植腫瘍やがん組織で解析する。
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