2019 Fiscal Year Annual Research Report
MΦブレブ小胞によるがん分子情報の新規伝達メカニズム
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19H03495
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
田中 正光 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20291396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗山 正 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (30398226)
伊藤 剛 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (60607563)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腫瘍マクロファージ / 線維芽細胞 / 間質細胞 / ブレブ小胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の情報が詰まっているため注目される細胞外小胞(TEV: tumor-derived extracellular vesicles)は、間質応答の誘因として重要であるが、TEVが腫瘍組織内でどの範囲にどう受け渡されているのかは未解明の部分が多い。これまでに腫瘍マクロファージはTEVを取り込み、組織中を広範囲に移動して遠方の間質細胞に癌由来分子を伝搬する事を見出した。その機構にはMΦが産生する新規細胞外小胞(ブレブ小胞)が大きく影響していた。本研の目的は、腫瘍マクロファージMΦが媒体となりTEVを広範囲の間質細胞に伝搬する機構のメカニズムと、それにより伝搬される癌由来分子の特性を明らかにすることである。小胞の単純な拡散ではなく細胞を介した伝搬機構により、その影響はこれまで考えられてきたより広範囲に及ぶ。EVを媒体として分子情報を細胞間でリレーする伝達様式を提示する事を目的とした。 方法としては胃癌細胞を主な解析対象として、そのEVを取り込んだMΦがさらに産生する細胞外小胞の分子(コンテンツ)から、RNAシークエンスによる解析法を用いて胃癌細胞に由来する分子を抽出した。その中にスフィンゴ糖脂質(GSL)代謝分子を多数同定した。これまでに特定したGSL代謝分子について、遺伝子ノックアウトと再導入により発現量を改変した癌細胞を作成した。これらの候補分子を遺伝子編集した癌細胞を移植した担癌マウスの解析では、その腫瘍の増大と局所浸潤に大きな変化が観察されている。また、興味深い事にそれらの遺伝子改変癌細胞の産生する細胞外小胞の量にも変動が見られ、その評価を進めている。さらにMΦが産生するブレブ小胞内の癌細胞由来分子から、蛋白質の細胞内局在をコントロールする輸送蛋白質に注目して個別解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の目的を達成するため、ヒト胃癌細胞のEVを取り込ませたマウスMΦが産生するブレブ小胞を回収し、これらに含まれるヒト遺伝子をRNAシークエンス解析で同定し、MΦ経由で伝搬される癌細胞由来遺伝子(ヒト遺伝子)を抽出した。抽出分子は、オリジナルの胃癌細胞が直接分泌するEVのコンテンツに含まれている事を確認した。 その中から現在、スフィンゴ糖脂質(GSL)代謝分子が同定でき、遺伝子ノックアウトと再導入により発現量を改変した癌細胞の作成など完成させる事ができた。それらの遺伝子改変癌細胞では、産生する細胞外小胞の量にも変動が見られる興味深い結果が得られている。またこれと並行した解析として、MΦのブレブ小胞産生機構について、Formin分子経路に着目し、現在同経路の遺伝子改変細胞では、線維芽細胞など他の間質細胞との細胞間接触を誘引として、ブレブ小胞類似のEVの産生が上昇する結果を得られている。 予定していた実験をおおむね進める事が出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
MΦブレブ小胞を介して伝搬される癌細胞由来分子の解析:(1)これまでに抽出したスフィンゴ糖脂質(GSL)の代謝分子について、まず癌細胞自身における細胞外小胞の産生量が変動する事の評価を完成させる。また、それを受け取ったMΦの小胞産生量の変化について調べる。さらに他の間質細胞に同GSL代謝分子が伝搬する事による受け手細胞の形質変化についてまとめる。(2)蛋白質の細胞内局在をコントロールする輸送蛋白質がブレブ小胞を介して伝搬される意義を継続して明らかにしてゆく。主に転写因子の核内移行の制御との関連性から、発現誘導される分子群の同定を進める。
MΦブレブ小胞の産生機構の解明:これまでに作成したFormin分子経路の改変細胞を用いて、Rockの活性変化による細胞骨格編成がブレブ小胞の分泌に重要である事を完成させる。また、同分子はデータベースの解析から癌細胞においても発現変動と悪性度に相関が見られるため、同じ機構が癌細胞の特殊な細胞外小胞の形成にも関わっている事について実験結果をまとめる。 腫瘍における最終的な意義の評価には、病理組織像との対応が必要であるため、上記の二項目について、ヒト胃癌標本を中心に行っている免疫染色を完成させ、結果をまとめてゆく。
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