2021 Fiscal Year Annual Research Report
Tolerance of cancer cells against amino acids deprivation in tumor microenvironments
Project/Area Number |
19H03496
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大澤 毅 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (50567592)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん微小環境 / アミノ酸 / がん代謝 / 転写・代謝制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍微小環境はがんの増殖・転移・浸潤・薬剤耐性などの悪性化に重要な役割を果たす。本研究は、腫瘍微小環境におけるアミノ酸代謝適応機構の解明を目的とし、腫瘍微小環境における(1)アミノ酸欠乏感知機構の解明、(2)アミノ酸欠乏に対する細胞適応機構の解析、(3)低酸素・低栄養・低pHのストレス適応とアミノ酸代謝のクロストークの解明、及び、(4)現存する化学療法との併用における相乗効果の検討、について検討する。本研究から低栄養で悪性化するがん細胞を攻略する画期的ながん治療法の開発や、難治性疾患である先天性アミノ酸代謝異常疾患の病態生理解明や治療法開発にも応用可能である。 本年度は、昨年度に引き続き、研究項目(1)と(2)について検討した。 (1)アミノ酸欠乏に対する細胞適応機構の解析から、mTOR非依存的な1アミノ酸由来の適応機構をメタボロ・プロテオーム解析で同定しつつある。また、1アミノ酸添付培地実験の補完実験として、通常培地から1アミノ酸のみを抜いた培地を使用し検討し、細胞小器官レベルでの解析にも挑戦し、ミトコンドリアや小胞体が低栄養でダイナミックに変動することや1アミノ酸でレスキューできることを発見した。今後このメカニズムを詳細に検討する予定である。 (2)低酸素・低栄養・低pHのストレス適応とアミノ酸代謝のクロストークの解明から、ストレス適応機構と協調的に働く、mTOR複合体を介さない新たなアミノ酸代謝研究が注目されている。申請者は、ストレス適応機構とアミノ酸シグナルが協調的に働くかどうか、エンハンサー領域のモチーフ解析や発現遺伝子群の上流パスウェイ解析やメタボロ・プロテオーム解析から解明する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍微小環境におけるがん細胞はmTOR非依存的なアミノ酸感知・適応機構を介しがん悪性化を促進するという研究仮説をもとに、申請者が持つ1アミノ酸を添加した独自の低栄養培養系を駆使して、繊維芽細胞などの正常細胞とがん(HeLa, PANC1)細胞の比較から1アミノ酸に起因する系統的な遺伝子発現解析、ヒストン修飾解析やメタボロ・プロテオーム解析を実現する。本年度は、昨年度に引き続き、研究項目(1)と(2)についても検討し、概ね順調に進展している。 (1)アミノ酸欠乏に対する細胞適応機構の解析 本研究では、mTOR非依存的な1アミノ酸由来の適応機構をメタボロ・プロテオーム解析で同定しつつある。また、1アミノ酸添付培地実験の補完実験として、通常培地から1アミノ酸のみを抜いた培地を使用し検討し、細胞小器官レベルでの解析にも挑戦し、ミトコンドリアや小胞体が低栄養でダイナミックに変動することや1アミノ酸でレスキューできることを発見した。今後このメカニズムを詳細に検討する。 (2)低酸素・低栄養・低pHのストレス適応とアミノ酸代謝のクロストークの解明 ロイシン、イソロイシン、バリンなどの必須アミノ酸は、mTOR複合体を介し転写・翻訳・増殖・転移などがんの進展・悪性化を促すだけでなく、HIF1α、SREBP2、ATF4のストレス適応機構と協調的に働くことが最近示唆され注目されている 。一方、申請者は、腫瘍微小環境において、低酸素・低栄養・低pHの組み合わせが、低酸素誘導転写因子HIF1αの下流として知られる血管内皮増殖因子(VEGF)の発現や低栄養(ERストレス)応答転写因子であるATF3・ATF4の発現を相乗的に誘導することを見出している。ストレス適応機構とアミノ酸シグナルが協調的に働く、エンハンサー領域のモチーフ解析や発現遺伝子群の上流パスウェイ解析やメタボロ・プロテオーム解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍微小環境におけるがん細胞はmTOR非依存的なアミノ酸感知・適応機構を介しがん悪性化を促進するという研究仮説をもとに、申請者が持つ1アミノ酸を添加した独自の低栄養培養系を駆使して、繊維芽細胞などの正常細胞とがん(HeLa, PANC1)細胞の比較から1アミノ酸に起因する系統的な遺伝子発現解析、ヒストン修飾解析やメタボロ・プロテオーム解析を実現する。本研究は、概ね順調に進んでいることから、来年度は、引き続き、(1),(2)の項目を検討し(3)に繋げる。 (1)アミノ酸欠乏に対する細胞適応機構の解析 本研究では、mTOR非依存的な1アミノ酸由来の適応機構をメタボロ・プロテオーム解析で同定する。また、1アミノ酸添付培地実験の補完実験として、通常培地から1アミノ酸のみを抜いた培地を使用し検討し、細胞小器官レベルでの解析にも挑戦し、ミトコンドリアや小胞体が低栄養でダイナミックに変動することを見出している。さらに、1アミノ酸でレスキューできることを発見した。今後このメカニズムを詳細に検討する予定である。 (2)低酸素・低栄養・低pHのストレス適応とアミノ酸代謝のクロストークの解明 ロイシン、イソロイシン、バリンなどの必須アミノ酸は、mTOR複合体を介し転写・翻訳・増殖・転移などがんの進展・悪性化を促すだけでなく 、ストレス適応機構と協調的に働くことが最近示唆され、mTOR複合体を介したアミノ酸代謝研究が注目されている 。一方、申請者は、独自の1アミノ酸培養系で行い、低酸素・低栄養・低pH、および、HIF1α、SREBP2、ATF4のストレス適応機構とアミノ酸シグナルが協調的に働くかどうか、エンハンサー領域のモチーフ解析や発現遺伝子群の上流パスウェイ解析やメタボロ・プロテオーム解析から解明する予定である。 (3)現存する化学療法との併用における相乗効果の検討する予定である。
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