2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H03507
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
高橋 暁子 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞老化プロジェクト, プロジェクトリーダー (60380052)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞老化 / がん微小環境 / SASP |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、がん細胞においてはDNA複製経路やDNA修復経路の活性化の副産物としてDNAの一本鎖とRNAの一本鎖からなるR-Loop構造(DNA/RNAハイブリッド)が過剰に産生され、腫瘍の発症や悪性化に関与することが示唆されているが、私たちは老化細胞においてもDNA/RNAハイブリッドが細胞内に多く蓄積していることを見出した。そこで、老化細胞やがん細胞でDNA/RNAハイブリッドが過剰に産生され細胞内に蓄積する分子メカニズムを明らかにするために、ヒト正常線維芽細胞に継代培養やがん遺伝子の活性化などによってReplicative senescenceやRas-induced senescenceを誘導する前後でRNAシーケンス解析を行った。特に、正常細胞に比べて老化細胞やがん細胞で発現が大きく変動する遺伝子群に着目し、DNA/RNAハイブリッドの産生と細胞内蓄積に関与する可能性のある候補遺伝子を同定した。そして、ヒト正常線維芽細胞においてこの候補因子のノックダウンや過剰発現を行った際に、細胞内でDNA/RNAハイブリッドの産生源であるR-Loop構造の量が変化することを見出した。老化細胞の細胞質画分のドットブロット解析の結果から、DNA/RNAハイブリッド構造は核内だけではなく、細胞質にも蓄積していることが明らかとなった。そこで、ヒト正常線維芽細胞やマウス線維芽細胞を用いてDNA/RNAハイブリッドを導入すると、濃度依存的にSASP(Senescence-associated secretory phenotype)関連遺伝子の発現が誘導されることを見出した。現在、老化細胞においてどの核酸センサーがDNA/RNAハイブリッドを認識しているのかを明らかにするために、解析をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老化細胞やがん細胞でDNA/RNAハイブリッドが過剰に産生され細胞質内に蓄積する分子メカニズムを明らかにするためにRNAシーケンス解析を行った結果、候補因子を同定することができた。現在、その機能解析も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究からDNA/RNAハイブリッドが、SASP(Senescence-associated secretory phenotype)関連遺伝子の発現を誘導することを見出したので、今後は老化細胞においてどの核酸センサーがDNA/RNAハイブリッドを認識しているのかを明らかにすることを目指す。また、DNA/RNAハイブリッド免疫沈降シーケンス解析を行うことで、ゲノム上のどの領域からDNA/RNAハイブリッドが産生されているのかを明らかにする。
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