2020 Fiscal Year Annual Research Report
ホウ素中性子捕捉療法における窒化ホウ素粒子の細胞内分布と治療効果の検証
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19H03513
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田村 磨聖 大阪大学, 核物理研究センター, 特任講師(常勤) (20747109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 直史 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90648932)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん / ホウ素中性子捕捉療法 / 窒化ホウ素ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、小型中性子発生装置の使用開始時期に遅延が生じ、中性子照射実験が行えなかったため、前年度から行っている実験環境の構築、マグネタイトコーティング窒化ホウ素ナノ粒子の細胞内局在の確認を中心に実験を行った。 マグネタイトコーティング窒化ホウ素ナノ粒子の細胞内動態と、使用したサンプルのSEM像を確認した。細胞内動態は、フェロシアン化カリウムを用いたプルシアンブルー染色により確認した。主に細胞質に分布しており、一部は核周辺への集積が認められた。核内への集積も画像上は認められるものの、共焦点顕微鏡での観察ではないために、明確な結論には至っていない。 SEM観察では、コーティング前の窒化ホウ素ナノ粒子で凝集体の存在が確認され、マグネタイトコーティング後ではより大きな凝集体を観察した。撮影サンプルの調整過程で凝集体が生じた可能性も否定できないが、窒化ホウ素ナノ粒子の凝集体へマグネタイトコーティングをしている可能性を強く示唆し、コーティング前の窒化ホウ素に対して、より長時間もしくは高出力状態での超音波による分散処理が望ましいと考えられる。前記に加え、次年度以降の動物実験用サンプルに用いる予定の小さい窒化ホウ素ナノ粒子の合成についても、既報論文を参考とした前実験を実施した。収量は数パーセントであるものの、DLS測定により20nm程度の粒径で合成されており、本方法を軸としたサンプルの合成を進めることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の計画では、年度中旬から小型中性子発生装置の使用環境が整い、中性子照射実験を行う予定となっていたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、年度中に使用環境が整わなかった。そのため、予定していた中性子照射実験によるホウ素中性子捕捉療法効果を評価できていない。また、研究の進捗に大きな影響を及ぼす事項ではないが、窒化ホウ素ナノ粒子の細胞内分布をより明確に分ける合成法に関する検討を進めたものの、前年度の結果から目立った進展はなかった。細胞内分布の制御に関しては、本年度と異なる方法も含めて、次年度の中性子照射実験の待機期間に検討を持ち越すこととなった。これらの理由により、本研究課題の進捗状況はやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、細胞内局在が異なる窒化ホウ素ナノ粒子の合成検討と評価を行っていく。ホウ素中性子捕捉療法の細胞実験による評価の遅れについては、次年度の中旬には使用可能となる見込みであるため、使用再開後から順次評価していく予定である。状況によっては更に遅延が生じる可能性もあるが、それまでに各種窒化ホウ素ナノ粒子のコーティング条件の検討を進めていき、再開後速やかに評価できるよう準備を進めておく。 当初の実験計画では、細胞実験後に動物実験を実施する計画となっていたが、細胞実験の準備が整い、かつ、小型中性子発生装置の使用が不可となる期間が生じた場合には、前倒しで動物実験用のサンプル合成などを進める予定である。
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