2021 Fiscal Year Annual Research Report
ホウ素中性子捕捉療法における窒化ホウ素粒子の細胞内分布と治療効果の検証
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19H03513
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田村 磨聖 大阪大学, 核物理研究センター, 特任講師(常勤) (20747109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 直史 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90648932)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん / ホウ素中性子捕捉療法 / 窒化ホウ素 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も小型中性子発生装置の使用環境が整わず、中性子照射によるBNCT効果の評価ができなかったため、前年度から引き続き、マグネタイトコーティング窒化ホウ素ナノ粒子の評価を行った。 マグネタイトコーティング窒化ホウ素ナノ粒子は、マグネタイトコーティング用の鉄と、窒化ホウ素ナノ粒子中のホウ素の重量比をベースに、Fe/B比が0から1となる条件で合成した。コーティングの評価として、ICP-AESでナノ粒子の鉄およびホウ素含有量を測定した。ICP用のサンプルは、酸による鉄の溶解と、アルカリ融解による窒化ホウ素ナノ粒子の融解による2段階の処理で調整した。その条件では、計算上、窒化ホウ素ナノ粒子の30%程度を融解する。本条件下では、Fe/B=0.25, 0.5, 1のコーティング条件で、Fe/B=0.36, 1.47, 2.1の測定結果となり、溶解度を30%として補正すると概ね合成条件通りの粒子が合成されていると推測される。また、ナノ粒子に10万個の細胞を加えた同実験では、ホウ素の測定値がさらに減少した。信憑性を高めるために、より溶解度が高いICPサンプルの調整法が必要である。 窒化ホウ素ナノ粒子のタンパク結合についても検討した。プレリミナルな実験では、窒化ホウ素ナノ粒子の表面にシランカップリングで官能基を修飾し、その官能基を使ってFITCラベルが可能であった。同様の方法によりタンパク結合が可能であると考えているが、詳細な分析ができておらず、今後の検討課題が残った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
一昨年度から、小型中性子発生装置による中性子照射実験の環境が整わず、ホウ素中性子捕捉療法の効果が検証できていない。また、この期間中に小型中性子発生装置を改造しており、細胞実験条件の検討から再度行う必要がある。しかし、当該年度中に最低限実施する予定であった、その条件検討も実施できなかった。 一方で、ICP-AESによる窒化ホウ素ナノ粒子の定量条件が定まっておらず、予想以上の時間を要している。その検討に時間を要したため、窒化ホウ素ナノ粒子へのタンパク結合法の検討にも遅れが生じてしまった。 小型中性子発生装置が稼働するまでに検討する課題、稼働してから検討する課題が複数溜まっていることから、本研究課題の進捗状況は遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から持ち越した課題、窒化ホウ素ナノ粒子のICP-AESを用いたホウ素定量条件、窒化ホウ素ナノ粒子へのタンパク結合法の確認、そして、本研究課題の要である窒化ホウ素ナノ粒子の細胞内局在とホウ素中性子捕捉療法効果の評価について、順次解決していく予定である。 小型中性子発生装置の運転再開までに、ホウ素定量条件を決定し、細胞内小器官ごとのホウ素集積を定量する。運転を再開した後は、細胞内局在の異なる窒化ホウ素ナノ粒子を用いて、In vitroでの中性子捕捉療法の評価を優先して実験する。既に計画に遅れが生じた状況であるため、使用サンプルの再合成など、運転再開後の実験が円滑に進むように計画を進めていく予定である。
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