2019 Fiscal Year Annual Research Report
がん原発巣と転移巣の両方の根治を目指した抗がんウイルス療法の新戦略
Project/Area Number |
19H03515
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中村 貴史 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70432911)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 癌 / ウイルス療法 / バイオテクノロジー / 遺伝子治療 / トランスレーショナルリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
生きたウイルスを利用したがんウイルス療法は、感染した細胞・組織内で増殖伝播しながらそれらを死滅させるウイルス本来の性質をがん治療に利用する方法であり、第一にウイルスの腫瘍特異的な増殖伝播による腫瘍溶解、第二にそれに伴う抗腫瘍免疫の賦活化など多様な作用機序を有する。がんウイルス療法では局所療法が全身に治療効果を発揮するという、既存のがん治療法にはない新しい概念が実証されつつある。一方、ウイルスを投与したがん原発巣における治療効果は十分であるが、ウイルスを直接投与しない転移巣での治療効果は限定的であるという問題点も明らかになってきた。そこで本研究では、この問題点を克服すべく、がん原発巣と転移巣の両方の根治を目指した抗がんウイルス療法の確立に取り組み、本年度は以下の成果を得た。 1)腫瘍細胞の融合を介したウイルス腫瘍溶解の増強 細胞融合を伴う腫瘍溶解が抗腫瘍免疫の惹起にどのように関与するかを明らかにするため、マウス大腸がんの担がんモデルマウスにおいて、細胞融合を示さない、又は細胞融合を示すワクシニアウイルスを片側の腫瘍内にのみ投与し、その治療効果を評価した。その結果、細胞融合を示さないウイルスに比べて、細胞融合を示すウイルスは投与した腫瘍だけではなく、投与しない腫瘍においても高い抗がん効果を発揮した。又、免疫学的解析によって、細胞融合を示すウイルスは抗腫瘍免疫応答を増強するだけではなく、腫瘍内の免疫環境を改善することが分かった。 2)免疫制御遺伝子の発現を介した腫瘍微小環境における免疫反応の制御 複数の免疫制御遺伝子の発現によって抗腫瘍免疫の惹起を最適化できるかを明らかにするため、腫瘍反応性T細胞の活性化を誘導するサイトカインやリンパ球を誘引するケモカイン、刺激性の共シグナル、さらに腫瘍微小環境の免疫抑制メカニズムを阻害する分子を発現する免疫制御型ワクシニアウイルスを作製した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目1)腫瘍細胞の融合を介したウイルス腫瘍溶解の増強に関しては、担がんモデルマウスを用いた評価と解析を実施する当初の研究目的は達成した。研究項目2)免疫制御遺伝子の発現を介した腫瘍微小環境における免疫反応の制御に関しては、当初の予定通り、免疫制御型ワクシニアウイルスを作製した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度において、研究項目1)腫瘍細胞の融合を介したウイルス腫瘍溶解の増強に関しては、細胞融合を特異的かつ強力に誘導することによって抗がん効果を増強できるかを明らかにする。研究項目2)免疫制御遺伝子の発現を介した腫瘍微小環境における免疫反応の制御に関しては、2019年度に作成した免疫制御型ワクシニアウイルスの評価を実施する。研究項目3)ウイルスの抗がん効果を予測するバイオマーカーの実証に関しては、2019年度より継続して、卵巣癌以外の膵臓癌、大腸癌、肺癌など様々ながん細胞株における解析を実施する。
|