2020 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストンメチル化酵素DOT1L阻害による新たな抗腫瘍メカニズムの解明
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19H03518
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 拓 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20381254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高澤 啓 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00593021)
仲瀬 裕志 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60362498)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒストン修飾 / DOT1L / エピゲノム / エピジェネティック治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
DOT1L阻害剤の抗腫瘍メカニズムを明らかにするため、乳がん細胞株、骨髄腫細胞株をDOT1L阻害剤あるいはDMSOで6日間、9日間および12日間処理し、遺伝子発現をRNA-seqにより解析した。またヒストンまたH3リジン4トリメチル化(H3K4me3)およびヒストンH3リジン27アセチル化(H3K27ac)をクロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-seq)で解析した。 RNA-seqデータを解析した結果、DOT1L阻害剤処理により発現誘導を受ける遺伝子には、免疫応答、インターフェロン応答遺伝子、アポトーシス関連遺伝子がエンリッチしていた。さらに乳がん細胞ではVitamin D受容体経路がエンリッチしていた。一方、DOT1L阻害剤処理で発現低下する遺伝子には細胞周期関連、EGF-EGFRシグナル経路関連遺伝子がエンリッチしていた。これらの結果から、インターフェロンシグナルの誘導、アポトーシスの活性化、細胞周期の抑制が、DOT1L阻害による抗腫瘍効果につながる事が推測された。 近年DNAメチル化酵素(DNMT)阻害剤により、がん細胞の内在性レトロウイルス(endogenous retrovirus, ERV)発現が誘導され、ERV由来のdouble strand RNAがインターフェロン応答を引き起こすことが報告された。そこで、RNA-seqデータを用いて、ERV遺伝子の発現を解析した結果、DOT1L阻害によるERV発現の上昇が確認された。またChIP-seqデータから、ERV遺伝子領域のH3K4me3レベルの上昇が確認された。これらのことから、DOT1L阻害がDNMT阻害剤と類似のメカニズムでインターフェロン応答を誘導する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DOT1L阻害剤が抗腫瘍効果を示すがん細胞株を同定した。DOT1L阻害が遺伝子発現プロファイルに与える影響をRNA-seq解析し、ヒストン修飾に与える影響をクロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-seq)で解析した。これらの解析から、DOT1L阻害がoncogene signal関連遺伝子発現を抑制すること、インターフェロン応答関連遺伝子発現を活性化することを明らかにした。さらにDOT1L阻害が内在性レトロウイルス遺伝子のヒストン修飾を変化させて転写活性化させ、そのことがインターフェロン応答につながることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、DOT1L阻害剤が乳がん細胞および多発性骨髄腫細胞に対して、高い抗腫瘍効果を示す事を明らかにした。またそれらの細胞において、DOT1L阻害剤が遺伝子発現プロファイルに与える影響をマイクロアレイ解析し、インターフェロン応答遺伝子や免疫関連遺伝子の発現が強く誘導されることを明らかにした。さらにDOT1L阻害が、内在性レトロウイルスの転写活性化を誘導することを明らかにした。さらにDOT1L阻害が、がん細胞のERBB2発現を抑制しうることを見いだした。 今後は、DOT1L阻害剤による抗腫瘍メカニズムをさらに明らかにするため、DOT1L阻害ががん細胞のトランスクリプトーム・エピゲノムに与える影響を、RNA-seq、ChIP-seq、ATAC-seqにより網羅的に解析する。また免疫関連遺伝子のタンパク発現を、ウエスタンブロット、ELISA、フローサイトメトリーにより解析する。さらにインターフェロン受容体の中和抗体や、細胞内核酸センターに対するノックダウン実験を通して、DOT1L阻害剤がインターフェロンシグナルを活性化するメカニズムを明らかにする。 さらにDOT1L阻害と免疫療法の併用効果を検証するため、がん細胞とCD8陽性細胞傷害性Tリンパ球を共培養し、DOT1L阻害によるがん細胞の増殖抑制やアポトーシス誘導に対する影響を解析する。またがん臨床検体におけるDOT1L発現を解析し、免疫療法の治療効果との相関を解析する。
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Research Products
(6 results)