2019 Fiscal Year Annual Research Report
肺がんにおける分子標的治療残存細胞の解析を通じた獲得耐性出現機構の解析
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19H03524
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
片山 量平 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 基礎研究部, 部長 (60435542)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 薬剤耐性 / 治療残存細胞 / 肺がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、いつ、どのように、がんの薬物耐性は生じていき、なぜ現状獲得耐性が避けられないのかということを、治療薬奏功後にわずかに残る治療残存細胞(Persistent細胞)の性状を明らかにし、新規治療標的となる分子(パスウェイ)と新規治療法を同定し、これまでにない「耐性を生じなく(生じにくく)する新しい治療法」の発見を目指し、本研究を開始した。 2019年度は培養細胞モデル系、担がんマウスモデル系、再発症例由来培養細胞株のモデル系などで耐性細胞株を新たに樹立するとともに、これまでに樹立された各種臨床検体由来細胞株を用いて、治療抵抗性機構の解析と、治療残存細胞の解析を行った。論文として発表した主たる成果としては、次の通りである。ROS1融合遺伝子は肺がんの約1%に見つかり、そのタイプのがんの治療薬としてはROS1阻害薬のCrizotinibが承認され臨床で使用されている。しかし、数年もすると、ROS1にG2032R(2032番目のグリシン”G”がアルギニン”R”に変わる変異)などが生じることで薬剤耐性が生じることが問題となっている。このG2032R変異型ROS1に対し、企業との共同研究によりDS-6051bが有効であることを見出し論文として発表した。肺がんの約5%に見つかるALK融合遺伝子陽性症例では、4種類のALK阻害薬が承認されているが、それらを使用した際の獲得耐性機構について、所属機関が有するがん研有明病院の検体をIRB承認のプロトコールの下検索し、32症例のべ112検体を調べることで、日本人ALK陽性肺がん患者における耐性機構のパターンや、新たな耐性重複変異について発見し2本の論文として報告した。これらの研究の過程で、樹立した患者由来培養細胞株を用いて、治療残存細胞の存在を確認することに成功し、それらの一部を用いて1細胞レベルの発現解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SARS-CoV2の流行拡大により、昨年度3月より、本実績報告書を提出する5月現在まで実験を十分に実施できない状況が続いているものの、3月中旬までに取り終えた最新データに基づき、治療抵抗性残存細胞にも関わる新しい耐性克服戦略に関する論文化を進めることができている。また、これまでに進めてきたOmics解析データから、抵抗性が生まれるのに関与すると思われるパスウェイの解析や、治療残存細胞の1細胞レベルでの実験データも詳細に解析することができており、予定通りの進行である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度に引き続き、培養細胞モデル系、担がんマウスモデル系、再発症例由来培養細胞株のモデル系などで耐性細胞株を引き続き樹立するとともに、これまでに樹立された各種臨床検体由来細胞株を用いて、以下のようにして解析を継続して進める。 (a) ドライバーがん遺伝子・がん関連遺伝子の変異解析と、定量PCRやFISHでのCNV解析を行う。(b) 細胞株化に成功している細胞から順次、治療抵抗性機構の解析を実施する。(c) 新学術領域「先端モデル動物支援プラットフォーム」の約400からなる阻害薬ライブリーを用いた単剤及び併用薬スクリーニング等により、薬剤感受性プロファイル取得する。(d) 抵抗性のメカニズムが解明できたものについては、遺伝子のノックダウン等を含めて耐性機構の検証を実施し、in vivoでの治療実験もPDC-xenoで行う。(e) 上記の解析でもなお薬剤抵抗性が不明な症例については、ノックダウン/ノックアウトスクリーニング等を用いた解析を行う。(f) 上記(a)~(e)の検討で得られる治療残存腫瘍を回収し、(g)以降の解析を実施 (g) in vitro, in vivoの検討で得た残存細胞の遺伝子発現とATAC-seqおよびヒストンのChIP-seq等によりクロマチン構造と各遺伝子プロモーター領域近傍のヒストン修飾等を網羅的に解析し、感受性細胞と残存腫瘍細胞を比較解析する。残存腫瘍の抵抗性獲得に関する分子機構の手がかりが同定できた際には、関連する遺伝子のノックアウトや過剰発現の手法で検証すると共に、その標的に対する阻害が可能である場合には併用薬の探索や間欠的投与による残存腫瘍の除去を目指した新規治療戦略、耐性細胞出現を回避するための治療戦略、耐性の出現を遅らせることのできる治療戦略を探索する。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Overcoming resistance by ALK compound mutation (I1171S + G1269A) after sequential treatment of multiple ALK inhibitors in non-small cell lung cancer.2020
Author(s)
Takahashi K, Seto Y, Okada K, Uematsu S, Uchibori K, Tsukahara M, Oh-Hara T, Fujita N, Yanagitani N, Nishio M, Okubo K, Katayama R.
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Journal Title
Thoracic Cancer
Volume: 11
Pages: 581-587
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Drug resistance mechanisms in Japanese anaplastic lymphoma kinase-positive non-small cell lung cancer and the clinical responses based on the resistant mechanisms.2020
Author(s)
Yanagitani N, Uchibori K, Koike S, Tsukahara M, Kitazono S, Yoshizawa T, Horiike A, Ohyanagi F, Tambo Y, Nishikawa S, Fujita N, Katayama R, Nishio M.
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Journal Title
Cancer Science
Volume: 111
Pages: 932-939
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] simertinib Overcomes Alectinib Resistance Caused by Amphiregulin in a Leptomeningeal Carcinomatosis Model of ALK-Rearranged Lung Cancer.2020
Author(s)
Arai S, Takeuchi S, Fukuda K, Taniguchi H, Nishiyama A, Tanimoto A, Satouchi M, Yamashita K, Ohtsubo K, Nanjo S, Kumagai T, Katayama R, Nishio M, Zheng MM, Wu YL, Nishihara H, Yamamoto T, Nakada M, Yano S.
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Journal Title
Journal of Thoracic Oncology
Volume: 15
Pages: 752-765
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] The new-generation selective ROS1/NTRK inhibitor DS-6051b overcomes crizotinib resistant ROS1-G2032R mutation in preclinical models.2019
Author(s)
Katayama R, Gong B, Togashi N, Miyamoto M, Kiga M, Iwasaki S, Kamai Y, Tominaga Y, Takeda Y, Kagoshima Y, Shimizu Y, Seto Y, Oh-Hara T, Koike S, Nakao N, Hanzawa H, Watanabe K, Yoda S, Yanagitani N, Hata AN, Shaw AT, Nishio M, Fujita N, Isoyama T.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 10
Pages: 3604
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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