2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of chemoresistance-resistant signal mechanism of colon cancer liver metastasis
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19H03530
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
足立 淳 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, プロジェクトリーダー (20437255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長山 聡 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 医長 (70362499)
朝長 毅 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, 上級研究員 (80227644)
野村 大成 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究開発・支援センター, 研究リーダー (90089871)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大腸がん / リン酸化プロテオミクス / 化学療法耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
切除可能大腸癌肝転移の標準治療は、外科的切除が推奨されているが、術後再発率は高く、その治療法の開発は臨床における課題である。肝切除後、術後補助化学療法が施行されるが、施行後に再発肝転移が顕在化する症例は薬剤に耐性化していることが示唆される。キードラッグである5FUに対する耐性関連遺伝子の研究は多く行われているが、耐性機序に基づいた新規治療法は開発されていないためアンメットニーズが高い。 本研究では、個人差を乗り越えて、疾患特異性を検出するために、同一患者の経時採取検体を用いた解析を行った。具体的には、肝転移したStage 4切除可能大腸癌患者の化学療法前後及び化学療法を受けずに再発した24症例の経時採取された組織検体を用いて、質量分析を用いたリン酸化シグナルプロテオミクス解析を行った。リン酸化プロテオームデータを用いたキナーゼ活性化予測やシグナルエンリッチメント解析を行った。その結果、術後補助化学療法後に再発を認めた症例群(AdjCTx群)と化学療法を受けずに再発した症例群(NT群)を群間比較し、AdjCTx群において特異的に活性化が予測されたキナーゼ群及びシグナルネットワークの存在を明らかにすることに成功した。さらに化学療法耐性に関与する因子群の中から新規治療標的候補を抽出するために、培養細胞のプロテオミクスデータ、阻害剤、遺伝学的スクリーニングデータを取得・収集し、これらの大規模情報から治療標的候補を網羅的に精査する基盤を構築した。今後、治療標的候補を検証することで、新たな治療法の創出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝転移を有するStage 4切除可能大腸癌患者のうち,初回肝切除(T1)および,術後再発した再発肝転移(T2)が切除可能であった24症例から、肝転移巣および対照部位として、肝実質組織を採取した。24症例のうち、6症例はNT群)あり、残り18症例はAdjCTx群であった。 各検体から、LC-MS/MSを用いてタンパク質およびリン酸化部位をそれぞれ5812タンパク質及び23689リン酸化部位同定した。 患者毎に化学療法前後でのタンパク質およびリン酸化部位のデータの経時変化データを抽出し、キナーゼ活性を予測する手法 (PTM-SEA法: PTM Signature Enrichment Analysis) を用いて、化学療法前後でのキナーゼ活性変化を推測した。その結果、AdjCTx群とNT群を群間比較すると、AdjCTx群において特異的に活性化が予測されたキナーゼ群を認めた。 次にAdjCTx群患者を対象に、リン酸化部位毎に、化学療法前後でのリン酸化変動レベルと予後(Post recurrence OS)との相関分析を行った。PTM-SEA解析で活性が予測されたキナーゼのうち、いくつかのキナーゼは、キナーゼ自身の特定のリン酸化部位が、予後と相関を示していることが分かった。その中には、タンパクの変動レベルは予後とは相関せず、リン酸化レベルでのみ相関関係を認めるキナーゼも存在することが明らかになり、肝転移巣の免疫組織染色による検証を実施し、一部の検体において活性化を認めた。 さらに大腸がん細胞株35株タンパク質およびリン酸化部位の定量データを取得し、阻害剤、遺伝学的スクリーニングデータと相関性が強いリン酸化部位情報を抽出した。 上記のように、研究は順調に進展しており、来年度には研究が予定通り完了する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床検体のリン酸化情報を解析することで見つかったキナーゼについては、化学療法に対する薬効予測マーカー 、新規治療標的となる可能性があることが示唆された。今後、活性化しているキナーゼ、DNA損傷修復因子等の治療標的候補因子について、培養細胞での阻害剤、遺伝学的スクリーニング情報を用いて化学療法耐性細胞において細胞増殖抑制効果がみられる候補をスクリーニングおよび検証を行う。
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