2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of new gene transfer technology using novel strategy and verification of cellular competition hypothesis in adult hippocampus
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19H03534
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
小原 圭吾 関西医科大学, 医学部, 講師 (60740917)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 明俊 関西医科大学, 医学部, 助教 (50709152)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遺伝子導入 / Cre / 遺伝子の戦い / 神経細胞 / シナプス / 細胞競合 / 神経活動 / 海馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の生命科学、脳神経科学において、遺伝子導入技術は極めて重要な基盤技術の一つであり「ライフサイエンス技術の扇の要」である。しかしながらこれまで、自在性のある「遺伝子導入ウイルス技術」を開発するのは困難であった。 本研究課題の第一の目的は、新たな戦略を用いて、従来からあった技術的障壁を克服し、自在性のある「遺伝子導入ウイルス技術」を開発することである。そして第二の目的は、この新戦略技術と神経活動を不活性化させるKir2.1、微小内視蛍光顕微鏡による神経活動イメージング法を用いることにより、「局所脳領域において神経活動依存的な細胞競合によって神経回路やシナプスが精錬され調節される」という有力な仮説の検証を行うことである。令和元年度において、我々は、「外来導入遺伝子の戦い」という新たな概念を創案し、遺伝子組換え酵素であるCre、FLPがお互いに戦い合うように設計した新戦略を発明し(特願2019-238481)、実験新戦略技術群「BATTLE」を生み出すことに成功した。令和2年度においては、「BATTLE」技術をさらに発展させ、遺伝子組換え酵素であるCre,FLP,Dreが戦い合うことにより、3種類の複数遺伝子の反発分離的な導入を可能とする技術「BATTLE-2.1」の開発にも成功した。 脳神経回路の接合部であるシナプスは、複数の異なる神経細胞の極めて微細な突起が連結した構造物である。しかしこれまで、光でシナプスの全体像を可視化することは困難であった。我々は、「BATTLE-1」技術をさらに発展させて、既存の膨張顕微鏡技術と融合させた複合技術「BATTLE-1EX」を開発し、光を用いてシナプスの全体構造とその構成タンパク質の局在を高精細に可視化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の第一の目的は、新たな戦略を用いることにより、従来からあった技術的障壁を克服し、自在性のある「遺伝子導入ウイルス技術」を開発することである。そして本研究課題の第二の目的は、この新戦略技術と神経活動を不活性化させるKir2.1、in vivo微小内視蛍光顕微鏡による神経活動イメージング法を用いることによって、「局所脳領域において神経活動依存的な細胞競合によって神経回路やシナプスが精錬され調節される」という有力な仮説の検証を成体マウス海馬CA1領域において行うことである。令和2年度において、本研究課題の第一の目的である新戦略を用いた自在性のある「遺伝子導入ウイルス技術」に関して、成果が得られたので、学術論文(2報)の投稿を行なった。それぞれの論文の査読過程において、多量の追加実験を実施する必要性が生じたため、当初の予定よりも大幅に時間がかかってしまったが、その結果、当初の予定や予想を大幅に上回る研究成果(導入遺伝子の戦いの概念の創案、「BATTLE-1」、「BATTLE-2.1」、「BATTLE-1EX」の開発)が得られた(Kohara K. et al., iScience 2020, Inoue A. et al., Star Protocols 2020)。一方で、第一の目的達成(2つの論文のアクセプト)に大幅に時間がかかったために、第二の目的に関しては、微小内視蛍光顕微鏡の装着実験、マウス海馬におけるGcamp7Fの発現実験等を行なった。総合的に見て、第一の目的に関して、当初の予定と予想をはるかに上回る成果(導入遺伝子の戦いの概念の創案、「BATTLE-1」、「BATTLE-2.1」、「BATTLE-1EX」の開発)が得られたので、全体としては、おおむね順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一の研究目的において、「BATTLE」技術は現在のバージョンでは、レンチウイルスを用いていることから、P2のバイオハザードレベルにおいて、動物実験を行う必要(制約)がある。令和3年度においては、この点を改善するために、P1レベルのバイオハザードで実験可能となるように、全てAAVを用いた「BATTLE」技術や、遺伝子組換え「BATTLE」マウスの開発を進めていく予定である。またそれと並行して、第二の研究目的のために、「BATTLE」技術と神経活動を不活性化させるKir2.1、in vivo微小内視蛍光顕微鏡による神経活動イメージング法を用いることによって、「局所脳領域において神経活動依存的な細胞競合によって神経回路やシナプスが精錬され調節される」という有力な仮説の検証を成体マウス海馬CA1領域において行う研究を推進していく予定である。
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