2019 Fiscal Year Annual Research Report
活性酸素の分子種の動態を区別して追跡可能な放射性プローブの開発
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19H03607
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
向 高弘 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (30284706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 紘平 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (00546476)
山崎 俊栄 神戸薬科大学, 薬学部, 助教 (60636710)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射性医薬品 / 活性酸素 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な病態に対して活性酸素種 (Reactive Oxygen Species; ROS) が深く関連することが報告されているが、ROSの種類によって疾患との関連度が異なる。ROSの体内挙動を把握することは、病態機能解析に有益な情報をもたらすと考えられるが、ROSの各分子種の生成・代謝には酸素分圧が大きく寄与するため、現状生体内でのROSの挙動は正確に把握されていない。そこで、本研究では、生体内でのROSを区別して検出することを目的に、ROSの各分子種に特異的な分子プローブを開発する。プローブが細胞内に取込まれた後、ROSと反応して化学形を変えることで細胞内に滞留するメタボリックトラッピングの原理を活用することが有効であると考え、メタボリックトラッピングの原理に着目した新規放射性プローブを設計・合成するとともに、病態モデル動物においてROS検出の可能性を検証する。その中で今年度は、ROS反応性放射性プローブの開発に向けた標識前駆体、非標識体の合成を実施した。具体的には、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素に対する反応特異的な脂溶性置換基と、I-125を導入するための反応性置換基であるテトラブチルスズ基を、水溶性化合物であるフルオレセインに導入した標識前駆体を合成した。また、標識化合物の比較同定のために必要となる非標識体も別途合成した。さらに、ROSとの反応後に生じる生成物も合成し、今後標品として評価に供する。以上の合成段階において、ROSとの反応前後の化合物について、薄層クロマトグラフィーで顕著な差が認められ、ROSとの反応前後での脂溶性の変化に伴う、細胞内トラッピングが期待できる結果を得た。また並行して、虚血性心疾患等との深い関連が示されている脂質ラジカルについても、それを認識可能な放射性プローブを合成し、インビトロの系においてその有効性を示すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、ROSの分子種の動態を区別して追跡可能な放射性プローブの開発を目的として、新たに設計した標識前駆体、非標識体および反応生成物を合成し、さらに、反応前後の化合物間で脂溶性が大きく異なることを予備的に確認することができた。これらの合成過程で、位置異性体の存在による化合物の精製・同定に時間を要したことから、標識実験まで至らなかったものの、現在は、分離精製条件を確立し標識前駆体を得ており、今後すぐに標識実験に取り掛かれることから、おおむね順調に進展しているものと判断する。また併せて、脂質ラジカルを標的とするプローブについても、インビトロの系でその有効性を示すことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒドロキシルラジカルに対するプローブの標識前駆体、非標識体を合成する。また、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルに対する標識体を標識前駆体から合成する。また、非標識体について、ROSとの反応性を蛍光分光光度計などを用いて評価し、ROSとの反応による滞留性を培養細胞実験により検証する。さらに、健常動物に標識体を投与し、体内放射能分布を調べることにより、化合物の体内動態特性を把握する。
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Research Products
(8 results)