2020 Fiscal Year Annual Research Report
Integrated understanding of dermatan sulfate through uncovering pathophysiology of musculocontractural Ehlers-Danlos syndrome
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19H03616
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
古庄 知己 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90276311)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角田 佳充 九州大学, 農学研究院, 教授 (00314360)
岡田 尚巳 東京大学, 医科学研究所, 教授 (00326828)
野村 義宏 東京農工大学, 農学部, 教授 (10228372)
岳 鳳鳴 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (20532865)
松本 健一 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (30202328)
上原 将志 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (30748108)
水本 秀二 名城大学, 薬学部, 准教授 (40443973)
三宅 紀子 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (40523494)
吉沢 隆浩 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 助教 (40713392)
渡邉 敬文 酪農学園大学, 獣医学群, 准教授 (50598216)
高橋 淳 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (60345741)
山田 修平 名城大学, 薬学部, 教授 (70240017)
高野 亨子 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (70392420)
笠原 優子 日本医科大学, 医学部, 助教 (90391911)
山口 智美 信州大学, 医学部附属病院, 助教(特定雇用) (90802835)
宮田 真路 東京農工大学, 農学部, 准教授 (60533792)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 筋拘縮型エーラス・ダンロス症候群 / デルマタン硫酸 / マウスモデル / iPS細胞 / 包括的病態解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋拘縮型(古庄型)エーラス・ダンロス症候群(Musculocontractural Ehlers-Danlos Syndrome;mcEDS)は、CHST14変異(mcEDS-CHST14)またはDSE変異(mcEDS-DSE)による全身性のデルマタン硫酸欠乏に基づき、発生異常(先天性多発関節拘縮、内臓・眼などの先天異常)、進行性の結合組織脆弱性(皮膚過伸展性・脆弱性、全身関節弛緩・脱臼・変形、巨大皮下血腫)を特徴とする疾患で、研究代表者が発見し、疾患概念を確立、世界の研究をリードしてきた。本研究は、ALL JAPANの関連領域研究者による横断的研究体制を基盤に、患者由来組織、iPS細胞、マウスモデルを用いたmcEDSの包括的病態解析を通じて、全身性のデルマタン硫酸欠乏が、細胞・組織・臓器レベルで及ぼす影響を統合的に解明することを目的としている。次世代シークエンスによるカスタムパネル解析を利用した新規患者の一次スクリーニング体制は確立している。国際共同臨床調査(48家族66患者)の成果を投稿した。ノックアウトマウスの作出率向上のため適切な交配条件を検討した(Shimada et al., Exp Anim, 2020)。ノックアウトマウスの皮膚解析により、患者同様、デコリンのグリコサミノグリカン鎖の形態異常がコラーゲン細線維のネットワーク破綻を引き起こすことを示した(Hirose et al., Glycobiology, 2021)。ノックアウトマウスにおいても患者同様の脊椎変形が観察され、その発症メカニズム探索に取り組んでいる。CRISPR/cas9法によるモデルマウス作出に成功し、筋病変を含む病態解析を行った(投稿中)。mcEDS-CHST14患者由来iPS細胞から血管平滑筋細胞への分化誘導に成功し、巨大皮下血腫の発症メカニズムの一端を解明した(投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、mcEDS患者の臨床的・遺伝学的検討、患者由来組織を用いた病態解析、疾患モデルを用いた病態解析から成る。臨床的・遺伝学的検討については、次世代シークエンスによるカスタムパネル解析を利用した新規患者の一次スクリーニング体制を確立するとともに、国際共同研究により世界最大規模の患者コホート(48家族66患者)における詳細かつ包括的な臨床情報を収集し、国際誌への投稿を完了していることから、順調に進んでいると言える。患者由来組織を用いた病態解析については、皮膚組織を用いた病理学的検討から、デコリンのグリコサミノグリカン(GAG)鎖の形態異常がコラーゲン細線維のネットワーク破綻を引き起こすことを明らかにした。GAG鎖の生化学的異常(通常はデルマタン硫酸、患者ではコンドロイチン硫酸に置換)が形態異常を引き起こすことを世界で初めて示した重要な発見である。血清を用いたタンパク分析にも着手した。モデルマウスを用いた病態解析研究においては、ノックアウトマウスの作出率向上のため適切な交配条件を見出した。皮膚解析により、患者同様デコリンのグリコサミノグリカン鎖の形態異常がコラーゲン細線維のネットワーク破綻を引き起こすことを示した。また、患者同様の脊椎変形(後弯)を見出し、その発症メカニズムを探索中である。CRISPR/cas9法によるモデルマウス作出に成功し、筋病変発症メカニズムの一端を解明した。多彩な病態の解明に向けて順調な進捗と考えられる。mcEDS-CHST14患者由来iPS細胞を用いた研究では、iPS細胞を血管平滑筋細胞へ分化誘導し、巨大皮下血腫の発症メカニズムの一端を解明した。オンライン班会議を開催し、研究の進捗を共有するとともに、有意義な意見交換を行うことができた。以上、基礎・臨床を含めた研究チーム全体の協力関係は進化し、当初の計画以上の進展と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床的・遺伝学的検討としては、信州大学において次世代シークエンスによるカスタムパネル解析を用いた一次スクリーニングを継続、国内外からの患者リクルートを進め、詳細・包括的・持続可能な患者レジストリを構築する。陰性例に対して、国立国際医療研究センターにて網羅的遺伝子解析を実施し、新たな遺伝学的機序(新規原因遺伝子単離)を明らかにする。信州大学において、患者由来組織バイオリポジトリを運営し、これを基盤に、mcEDS-CHST14およびmcEDS-DSE患者における、糖鎖解析(名城大学)、CHST14タンパク分析および病勢関連バイオマーカーの探索(島根大学)、デコリンやその他のプロテオグリカン(バイグリカンなど)を含む細胞外マトリックス解析(東京農工大学)、cupromeronic blue染色を含む電子顕微鏡解析(GAGの観察)(酪農学園大学)、X線回折によるD4ST1の立体構造解析(高頻度変異P281Lが立体構造・酵素活性に与える影響を含む)(九州大学)を継続・発展させ、糖鎖医学的・生化学的・生理学的・病理学的異常を探索する。mcEDS-CHST14患者由来iPS細胞、mcEDS-DSE患者由来iPS細胞を用いて、多系統細胞(血管平滑筋細胞、骨・筋・神経系細胞)へ分化させ、巨大皮下血腫・骨病変など多彩な症状の発症機序を解明する(信州大学)。mcEDS-CHST14のマウスモデル(従来法、CRISPR/cas9法いずれも樹立済み)を用いて、多彩な発生異常および結合組織脆弱性関連症状を探索し(皮膚、骨、筋、血管など)、その発症機序を解明する(信州大学、日本医科大学)。これらの所見を統合し、デルマタン硫酸の発生および結合組織維持における役割を詳細かつ包括的に解明する。
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