2020 Fiscal Year Annual Research Report
Genetic-environmental interaction for congenital cardiovascular disease
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19H03622
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山岸 敬幸 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40255500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土橋 隆俊 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 客員講師 (10286528)
古道 一樹 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10338105)
内田 敬子 慶應義塾大学, 保健管理センター(日吉), 准教授 (50286522)
湯浅 慎介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90398628)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多因子遺伝 / 総動脈幹症 / Tbx1 / Tbx20 / 心臓神経堤細胞 / 二次心臓領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、先天性心臓流出路異常のモデルマウスとして、22q11.2欠失症候群の責任遺伝子であるTBX1の発現が低下した遺伝子改変マウスを解析し、遺伝子および環境因子がどのように心臓流出路異常の表現型に関与するかを解明することを目的としている。 Tbx1発現低下胎仔の総動脈幹症が、再現性をもって軽症化する妊娠母マウスに対する葉酸の投与法を確立した。予期せぬ結果として、葉酸の過量投与により胎仔に別のタイプの重篤な先天性心疾患が誘導される可能性が示唆された。さらに、心臓神経堤細胞をin vivoで標識・追跡した結果、Tbx1発現低下胎仔では、心臓流出路中隔を形成するはずの心臓神経堤細胞が移動の途中で異所性に細胞塊を形成して流出路に到達しないが、妊娠母体への葉酸投与により、異所性細胞塊が少なくなり、流出路に到達する心臓神経堤細胞が増加することが判明した。心臓神経堤細胞の遺伝子発現とDNAメチル化パターンの網羅的解析により、異所性細胞塊は神経系分化マーカーを発現することが示唆された。 ヒトiPS細胞を用いた実験系では、心臓流出路発生を担う心臓前駆細胞の制御機構を明らかにすることを目的とする。TBX1およびTBX20が発現する二次心臓領域由来心臓前駆細胞を、ヒトiPS細胞から分化誘導・純化するために、二次心臓領域特異的マーカーであるISL1遺伝子の制御下に発現する蛍光蛋白遺伝子を、ゲノム編集技術を用いてヒトiPS細胞に導入・選別し、心筋分化誘導後、蛍光発現が認められたiPS細胞株を樹立・ストックした。 さらに、複数の遺伝子変異の遺伝的相互作用が先天性心疾患の表現型におよぼす影響と分子機序を解明することを目的として、TBX1・TBX20複合遺伝子変異(Tbx1+/-Tbx20+/-)マウスの一部に認められるTbxヘテロ変異マウスと同様か、やや重症の心臓流出路・大血管表現型について解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)COVID-19禍で動物実験および細胞実験を進めることができない期間があり、研究の進捗が遅れている。 2)Tbx1発現低下マウスの総動脈幹症の妊娠母体葉酸投与による表現型軽症化に、in vitroおよびin vivoの実験で再現性をもって、心臓神経堤細胞の移動パターンが関与することが明らかにされた。 3)Tbx1発現低下マウスの総動脈幹症の発症ならびに表現型軽症化の分子機序として、単離培養したマウス心臓神経堤細胞の遺伝子発現パターンとDNAメチル化パターンについての網羅的解析がやや進んだ。 4)二次心臓領域特異的マーカーであるISL1遺伝子の制御下に発現する蛍光蛋白遺伝子を、ゲノム編集技術を用いてヒトiPS細胞に導入・選別した。 5)TBX1・TBX20複合遺伝子変異(Tbx1+/-Tbx20+/-)マウスの心疾患表現型の解析がやや進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
心臓神経堤細胞を特異的に標識する分子マーカーとしてP0-Creトランスジーンを利用した新たなin vitroの実験系を構築する。Tbx1発現異常ならびに心臓神経堤細胞の挙動変化に関与するシグナルを修飾する化合物について、iPS細胞実験系、マウス細胞培養実験系を用いてスクリーニングする。最終的には、スクリーニングで特定した化合物をTbx1発現低下マウス妊娠母体に投与して胎仔の心臓表現型の変化を観察し、葉酸と組み合わせてin vivoで作用する化合物の同定を試みる。 また昨年度に引き続き、ヒトiPS細胞実験系を用いて、心臓流出路発生を担う心臓前駆細胞の制御機構を明らかにし、それを修飾する環境因子を解明する。目的を達成するために、TBX1およびTBX20が発現する二次心臓領域由来心臓前駆細胞を、ヒトiPS細胞から分化誘導・純化する方法を開発する。具体的には、心臓領域特異的マーカー遺伝子の制御下に発現する蛍光蛋白遺伝子を、ゲノム編集技術を用いてヒトiPS細胞に導入・選別する。上記作製したヒトiPS細胞株において、TBX1の開始コドンをCRISPR/Cas9で非相同末端結合によって破壊することによりTBX1の発現を障害したヒトiPS細胞を作製し、その心筋分化誘導過程における、分化効率、増殖能、トランスクリプトーム、プロテオームを解析し、TBX1の発現異常に関与するシグナルを同定する。 さらにTBX1・TBX20複合遺伝子変異(Tbx1+/-Tbx20+/-)マウスの心疾患表現型を解析する実験系では、実体顕微鏡による全体像の観察、心臓組織切片の作製、分子マーカー(一次心臓領域マーカー:Tbx5, Nkx2.5など、二次心臓領域マーカー:Fgf8, Islet-1など、心臓神経堤細胞マーカー:Pax3, AP2など)を用いた検討により、心疾患表現型と分子機序を解明する。
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